校長ブログ
理系人材育成
2025.03.10
教科研究
3月10日
日本の大学の文系学部の割合で言えば45%、私立大に限れば51%が人文・社会科学に集中しています。(2022)OECD(経済協力開発機構)によると、理工系学部への入学者の占める割合は19%程度と加盟国平均である27%を下回り、最下位に近くなっています。第1次ベビーブームの影響で大学進学者が急増した1960年代に費用が少なくて済む私大の文系学部を受け皿にしたことが現在に続く人材育成の偏りを生み出したのです。しかし、15〜64歳の生産年齢人口が2040年に約6千万人と2025年と比べると15%減少すると推計される中、あらゆる分野でDXが不可欠になります。言い方を変えると、文理融合の教育を推進しないとデジタル社会の人材需要に対応できないということです。
ダイキン工業は社内に「ダイキン情報技術大学」を設置しました。情報系技術者は社員の1%にあたる93人しかいなかったものの、文系理系問わず1,500人が育っているそうです。北海道大は、地球規模の課題解決にデータを重視し、高度なデータ分析やAI開発など幅広い分野で利用できるプログラミング言語「Python(パイソン)」の学習を1年生の必修にしました。法曹界に有為な人材を輩出してきた中央大学は理系を強化し、2027年には農業情報学部(仮称)を開設予定。食やビジネスについて、同大が得意とする法律や社会科学的な知識を持ち、農業のDXに貢献できる人材を育てる方向性です。
日本は15歳での理数系学力は世界でトップクラスですが、数学Ⅲまで履修する生徒は3割程度であり、志願者の減少を危惧して入試で数学の出題を避ける大学や受験対策に傾く教育が若者の成長を狭めているという指摘があります。文科省は3,000億円の基金を設け、理系学部の増設を促していますが、支援先に選んだ私大109校の中には早くも計画を断念する大学が現れているのが現状です。
もちろん、文系の専門領域も必要であることは言うまでもありませんが、改善すべきは、文理分断や数学の楽しさを伝えられない教育の在り方。必要なのは、数学に興味・関心を示す生徒を増やすストラテジーと教科横断的な文理融合へのパラダイムシフトです。少子化が進む日本では、個々のポテンシャルを最大限に伸ばす教育を展開しなければ国力は保てません。教育内容を巡る議論や入試改革が進む中、20世紀型の教育を脱して全体の知力を高めるカリキュラム・マネジメントが不可欠なのです。