校長ブログ

MIT流の人材育成

2025.03.24 大学進学研究

3月24

 マサチューセッツ工科大(MIT)と言えば、ITから生命科学まで、様々なイノベーションを起こし、有能な起業家を生み出し、卒業生が立ち上げた会社は3万社以上という世界のエリート大学です。サリー・コーンブルース学長がMIT流教育について語られています。

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 MITは世界中から最優秀な教員と学生を集め、学生の97%がSTEM(科学・技術・工学・数学)分野を専攻し、起業家精神や基礎科学の成果を社会の利益に活かすことを重視しているとのこと。また、約2,000人の学生が音楽を学び、このような教科横断的な視点が卓越性を生み出す要因となっているそうです。

 技術革新を起業につなげるエコシステム(生態系)は群を抜き、学生は問題を見つけると知識と技術を駆使して解決に挑む習慣があるというから素晴らしいの一言。創造力を育む背景にあるのが「ハック」とイタズラ文化。モットーは知識だけでなく、手を使って驚くべきことをしたいという遊び心とのこと。つまり、型破りなことを尊重し、奇抜さ、オタクっぽさ、創造的な不遜さなどを歓迎するということです。 

 例えば、寮にいる学生がローラーコースターを作り、乗れるようにします。そこを訪れると、ジャガイモを飛ばすバズーカが渡され、撃つとイモが飛び出して壁に当たり、粉々になり、これでココナツやパインを砕き、カクテルを作るといった調子。これも工学の成果であり、楽しみながら学べる査証です。

 サリー・コーンブルース学長は、新たな発見を求め、挑戦し続ける学生の育成はMITだけでなく、他大学でも可能とおっしゃっています。学生にただ学ばせるだけでなく、体験する機会を提供する必要があり、そのためには非営利団体や地域との連携が不可欠と言及されています。

 AIが法学、医学、金融学、教育学にどんな影響を与えるかを考える教材を開発し、世界に提供するとか、AIが未来の職業をどう変えるかというテーマで教員から論文を募り、他校がMITの考えに触れられるよう発信に努めていくそうです。

 ご自身は気候変動問題を立ち向かうことをミッションとし、大学全体での取り組みとして、産業の脱炭素化、大気中の温暖化ガス除去や変化した陸地の復元などで教員をリーダーとし、周囲を巻き込んでいくとのこと。具体的には、3年、5年、10年、30年先まで見据えた行程表をつくり、二酸化炭素を排出しないセメント作成法や核融合エネルギーの開発といった実証事業を進めていくそうです。

 米国の難関大の高い学費は優れた教育研究を可能にする一方、社会の格差や分断を招いたとの批判もあります。学費の高騰は社会に分断を引き起こしていますが、MITは受験審査の際に学費を負担できるかを問わず、合格決定後に必要な額をすべて支給する制度を導入しているとのこと。これは全米では9校だけであり、学生の87%がローンを抱えずに卒業しており、あっても額は小さいそうです。その上で、MITは実力主義の大学であり、エリートがエリート主義ではないと定義しており、門戸を広げ、入ってきた誰もが成功できるよう支援しています。