校長ブログ

eスポーツ後進国

2025.03.06 EdTech教育
3月6日

 近年、eスポーツが世界中で拡大しているものの、日本は後進国と言われています。理由は従来からのスポーツ観が障壁となり、ゲーム人気を活かし切れず、欧米や中韓に引き離されているから。

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 1980年代にもゲームの大会はありましたが、1990年代のインターネットの普及により、スポーツ化が世界で加速、2000年にはeスポーツという言葉が使われるようになりました。「ストリートファイター」や「eFootball」といった人気ゲームをはじめ、その数はいまや数万種類あり、世界の競技人口は1億人を超えると言われています。

 昨年、サウジアラビアのリヤドでeスポーツワールドカップが初めて開催されました。参加したチームは100チーム以上、参加選手は1500人、全21競技が行われました。来場者は200万人以上、初代王者となった地元チームには賞金700万ドル(約104000万円)が贈られています。

 2033年、世界のeスポーツの市場は現在の6倍になり、26386億円に伸びると言われています。(Market.us米国では、賞金1億円を超える大会が次々に開催され、高校の公式スポーツにも指定されるほどだとか。

 eスポーツに対する投資も増えています。韓国はパソコンゲームの人気を受け、政府がプロリーグの設立を支援しています。中国は国家体育総局がeスポーツを正式競技に選定し、普及に力を入れています。両国は、今や米国に次ぐ市場規模です。サウジアラビアもW杯の開催に公的資金を投入するのに加えて、特区を設けて企業を誘致して投資する計画を立てています。

 一方、日本の市場は1945400万円と言われています。(日本eスポーツ連合)。この5年間で3倍以上に伸びたとは言うものの、米国に比べると6分の1です。海外では年収1億円以上のプレーヤーがいますが、日本でそのようなプレーヤーは出ていません。ゲーム大国で定評のある日本ですが、eスポーツで出遅れた要因がゲームは遊びという固定観念のようです。

 高橋義雄氏(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)は、スポーツとは本来、娯楽や遊び全般を指すものの、日本では競技の意味合いが強いことを指摘しています。また、高額な賞金が景品表示法の「景品規制」に抵触する懸念があったため、企業がビッグイベントを増やさなかったこともあります。

 状況変化により、伝統的なスポーツ界からのアプローチが増加しているようです。国際サッカー連盟はコナミデジタルエンタテインメントと契約し、サッカーゲーム「eFootball」の国際大会を開催しています。国際オリンピック委員会もeスポーツの世界大会を初めてサウジアラビアで開催します。将来的な五輪種目入りもめざしているようです。

 eスポーツが正式競技となった中国での杭州アジア大会では国の支援の差が浮き彫りになりました。昨年のW杯でも優勝者は出ていません。2026年の愛知・名古屋アジア大会が決まっていることもあり、スポーツ界や官庁も力を入れる模様。歴史をひもとけば、プロ野球やサッカーでは放映権料が伸び悩み、海外展開の遅れにより、欧米との市場規模の格差が開きました。一大産業になりつつあるeスポーツをどのように盛り上げるかも焦点です。

 eスポーツは、年齢や性別、障害の有無に関わらず取り組めるのが利点。国民スポーツ大会では文化プログラムに採用され、健康増進や地域活性化のためのイベントが目につくようになりました。(本校もeスポーツ大会はじめ、様々な取り組みを行っており、毎回、活況です)

 国内のトップアスリートの強化拠点であるハイパフォーマンススポーツセンターはeスポーツなどに関する研究室が設立されました。eスポーツを産業として発展させるためには、伝統的なスポーツも取り入れて問題を解決していく姿勢が不可欠であることは言うまでもありません。2007年、アジア室内大会で正式競技となって以降、国際スポーツ大会での採用が増えています。