校長ブログ

大学無償化

2025.02.13 大学進学研究

2月13日

 3人以上の子どもを扶養するいわゆる、多子世帯の大学の授業料を無償化する法改正案が閣議決定されたそうです。これまでの所得制限がなくなり、さらに41万人が対象となり、進学に伴う家計の負担を軽減してくれるというから朗報です。利用者は対象となる学生の約6割にあたります。

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 この制度を導入することによって、多くの国公立大は授業料と入学金の家計負担がなくなり、私立大も大幅な負担減となります。対象となるのは扶養する子どもが3人以上おり、大学、短大、高等専門学校、専門学校に通う学生がいる世帯。しかし、子どもが3人いても第1子が就職して扶養を外れると、第2子以降は対象外となります。

 現行の制度は、年収が約600万円以下の多子世帯であり、年収に応じた支援額を設けられていますが、今年から所得制限が撤廃されます。上限額は授業料が国公立大54万円、私立大70万円、入学金は国公立大28万円、私立大26万円であり、本人への給付ではなく、国費などを財源として大学側が授業料や入学金を減免するというものです。

 文科省によると、私立大の授業料の平均(2023)は約96万円であり、20年間で約15万円上昇しているそうです。当然、条件も厳しくなります。今までは授業の出席率が5割以下なら支援は打ち切られましたが、今年からは6割以下になります。また、修得した単位数が標準の7割以下の場合は警告があるようです。

 OECD(2024)によれば、日本の家計負担の比率は50%を超え、加盟国平均の倍以上。負担軽減に向けて、消費税増税による財源に大学進学の支援制度が設けられました。昨年からは多子世帯や私立大の理工農系学部に進学する学生に拡大し、年収上限を600万円に緩和しています。

 法改正によって無償化の対象は21万人から62万人に増加し、高等教育機関全体の約330万人の約2割をカバーする試算になるとのこと。しかし、国立社会保障・人口問題研究所(2021)によれば、実際に3人以上の子どもを予定するのは24%。文科省(2021)によれば、子どもが3人の世帯の進学希望率は71%であり、2人の世帯より低くなり、4人以上になると62%、さらに低くなっています。

 文科省は、公的支出を増やしても教育の質を保てないことには意味がないとし、3年間の定員充足が8割未満の大学などを対象外とする方針を示しています。今後の成り行きを注目しておきましょう。