校長ブログ

探究学習に向けて

2025.02.27 教科研究
2月27日

 戦後80年、日本では、多くの若者が現行の教育制度の下で学び、経済大国を築き上げてきたことは疑う余地がありません。しかし、時は移ろい、今、求められているのは、教科単位で一つの解を見つける以上に、予想不能な社会で、山積する課題に対する最適解を探究できる体験学習の積み重ねです。

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 これまで築き上げられてきた成功体験があまりに大きいと、その体験が負担になり、新たな挑戦をすることが難しくなることは常です。しかし、AIやインターネットなどの技術革新は目覚ましく、内外の教育現場では、斬新な取り組みが日進月歩。生徒だけでなく、教員にも成長の機会を与え、育てながら教育を続けることが不可欠とされています。

 学びの可能性を探るポイントは、題材が生徒自身のモチベーションの維持につながる興味・関心、好奇心や夢を抱けるかどうか。従来の発想に捉われることなく、デジタルを活用した個別最適化された学びや協働学習によってコミュニケーションの幅を広げ、体験の場をつくり出していくことが大切です。学ぶ側も教える側も共に意識改革が必要です。

 日本はOECD加盟国でSTEM分野の大卒の女性の割合が低いとのこと。加盟国の平均は30%以上ですが、日本は約18%(ヒューマンリソシア調査)となっています。STEAMとは科学、技術、工学、数学を意味する頭文字ですが、そこにアートやリベラルアーツを加えた文理融合の教育を意味します。探究的アプローチのことです。

 メルカリ創業者で、最高経営責任者(CEO)の山田進太郎氏は、女子中高生のSTEM分野への進学を支援する公益財団法人をつくり、独自の奨学助成金制度を設けています。すでに、大手企業と職業体験イベントを開催、2030年までに女子中高生10万人の参加をめざしているそうです。

 損保ジャパンがその一つ。保険商品の開発においては確率や統計といった分野の知識が欠かさず、今や、商品開発グループでは56割が理系出身者だそうです。業務には確率や統計を用いて将来の事象を見通すアクチュアリーという資格が大切であり、取得するのに平均8年かかるというからハードルはかなりのものです。

 全国の自治体や教育委員会と探究学習の普及に取り組んでいるSTEAM JAPANの代表理事である井上祐巳梨さんは、約5千人の教員研修を担当したとのこと。ご自身が支援されている東京都渋谷区は公立の小中学校で「総合的な学習の時間」を大幅に増やし、「シブヤ未来科」という授業を実践しています。また、デジタル機器を使って、様々な仕事や価値観を持つ内外の人々による講義も設けています。

 欧米にはSTEAM教育に違いがあるものの、探究的アプローチによる学びを体験する中で、新たな興味や自らの可能性を引き出す気づいてもらうチャレンジングな実践は万国共通なのです。