校長ブログ
留学生事情
2025.02.17
グローバル教育
2月17日
世界の留学生総数は約690万人(2022)となり、10年で1.7倍に増加しています。(ユネスコ、国際教育協会)2030年には900万人に達するという民間の推計もあり、留学生の自己実現に向けた取り組みは喫緊の課題と言えます。
留学生の45%が米国、英国、オーストラリア、カナダに留学していますが、グローバル化が進んでいるためか、トップの米国の占有率は徐々に下がっているようです。少子化を背景に、日本は2033年までに40万人、韓国は2027年までに30万人、台湾は2030年までに32万人という目標を掲げています。
欧米や豪州では移民・住宅問題から受け入れを抑制する政策が打ち出されており、英国では留学生が扶養家族を帯同できなくなり、留学ビザのための財政能力証明の基準額も上がりました。カナダでは新規留学生を約3割減らし、豪州ではビザ申請料金が2倍以上に値上がりしています。
日本の留学生30万人計画は一時、達成されましたが、コロナ禍による減少から回復していません。太田浩氏(一橋大学教授)は、国際的な留学生獲得競争は激化しているものの、アジアに位置する日本、韓国、台湾にチャンスが訪れている点を見据え、入試や定員管理制度を変えるべきだと主張されています。
高度人材が求められ、就職・転職先が世界に広がる昨今、数年間、日本語を学習して日本の大学に入学、卒業して就職、あるいは帰国して日系企業に就職というこれまでのモデルだけではもはや留学生は獲得しにくくなってきました。言い換えれば、世界標準に乗り遅れた教育や研究のレベルでは、もはや質の高い留学生の獲得はできないのです。
大学の入学者選考も検討しなければならなくなってきました。海外では、オンラインで出願でき、書類審査だけで合否通知があり、併せて、宿舎や奨学金の案内が届くのがふつうです。中国、韓国、台湾、香港の大学は語学学校をもち、大学進学につなぐプログラムに加え、短期の語学留学者向けの学習なども提供しているのです。
海外では学位を取得する目的だけでなく、1~2学期の在学で単位を取得する留学が拡大しています。ハーバードを含むアイビーリーグ校には日本語や日本学を学ぶ学生が多くいますが、交換留学制度がないため、学生は自ら留学先を探し、大学が資金を援助するという仕組みとなっています。アジア学を学びたい学生は増え、日本の魅力は増していますが、学生は受け入れ先を見つけるのに苦労しているのです。
日本では移民政策がなく、定員管理の下、限られた範囲で留学生を受け入れているのが現状です。海外の若者が抱く日本留学への興味・関心に対応することこそ、日本の大学を世界に開くチャンスになるのです。