校長ブログ

デジタル新時代と文楽

2025.02.12 EdTech教育
2月12

 人形浄瑠璃文楽が舞台の背景にアニメーションを使ったり、プロジェクションマッピングで映像を駆使したりする取り組みが始まっています。単に文楽とアニメをくっつけるだけでなく、互いに競い合えるコラボレーションに発展しそうです。

DSC09038.JPG

 昨年、国立劇場を運営する日本芸術文化振興会が米国のロサンゼルス、フェアフィールド、ニューヨーク、ワシントンD.C.、ヒューストンの5都市で行った計9回の上演は、全日ほぼ満席、大盛況だったとのこと。国立劇場の制作としては初の海外公演ですが、大道具の背景画を使わず、アニメ映像が使われました。手掛けたのはジブリ作品の背景美術担当のアニメ美術監督。プロデューサーによれば、キャラクターを際立たせ、世界観をきれいに表現するアニメは文楽に合うと考えたからだそうです。

 また、スクリーンに投影された華麗で色鮮やかな絵のマッピング映像が伝統的な文楽の世界と融合して幻想的な空間を作り上げた模様。スクリーンに映されるのは絵だけでなく、時折、舞台に向かって右側の上手にいる太夫と三味線弾きのアップ映像も投映しているとか。観客はふつう、前方の人形遣いを中心に舞台を見ていますが、太夫が口を大きく開けて熱く語る姿や三味線弾きの力強い撥(ばち)さばきを大画面で見れるという効果もあったようです。併せて、字幕には現代語と英語を用い、太夫が語る詞章をわかりやすく伝える工夫までされています。

 ゲームメーカーであるカプコンとのコラボによって誕生したのが「山祇祭祀傳(やまつみさいしでん)巫女の定の段」と作品で、ゲーム世界をコンピューターグラフィックスと文楽で表現しています。見どころの一つが巫女の神秘的な舞踊であり、標準的な袖より2倍近く長い袖がある白い着物をまとい、その場で回りながら舞うというもの。ちなみに、全編1322秒は動画サイトで無料公開されています。

 文楽とアニメ、ゲームなどとの協演は新しいファンを掘り起こす可能性がありそうです。さらに、日本のアニメやゲームは海外でも人気が集めているため、より多くの外国人が文楽に関心を持つこともあり得ます。国立文楽劇場は過去4回、ゲームとのコラボを実施しており、オンラインゲーム「刀剣乱舞―ONLINE―」と組み、「刀剣男士」のキャラクターの人形を制作していますが、若者の来場が増えたそうです。伝統芸能を次代につなぐために後継者の育成が求められる中、新しい風を吹き込んでくれるチャレンジです。