校長ブログ
デンマークのインクルーシブ教育
2025.02.03
グローバル教育
2月3日
障害がある、ないにかかわらず、子供が同じ場所で学ぶ統合型教育を実践しているデンマーク。少人数クラスであり、個々のニーズに合わせた支援を展開しています。重い障害があると、年齢が上がるにつれて共に学ぶことが難しくなると言われており、障害のある子が挫折感を味わうなど、分離型教育へ回帰した時期もあったそうです。
第0〜9学年までの義務教育を終えた子供全員が高校へ行くわけではありません。デンマークの教育は、選択肢が多く、例えば、第10学年として1年間それまでの学びを復習する子がいたり、16歳前後の子が通う全寮制の学校エフタスコーレで過ごす子がいたり、職業別学校に行く子がいたりと多様な学びを提供しています。大学に進学する年齢も違いがあり、高校を卒業して大学に入る日本とはかなり状況が違います。
デンマークでは、一人ひとりに応じた教育が展開されていますが、それはインクルーシブ領域とは限りません。学び直しも含めた多様な選択肢と柔軟性は、学習指導要領が求める個別最適化した学びにつながります。
障害の有無に関わらず、同じように社会で暮らしていけるようにしようという考え方をノーマライゼーションと言います。その発祥国であるデンマークには障害者と健常者が共に学ぶ寄宿制の学校があり、先進的な学校として注目されています。いわゆるインクルーシブ(包括的)教育です。
オーフスからバスで1時間ほどの海沿いの町ホウに、18歳以上の寄宿制学校フォルケホイスコーレの一つであるエグモント・ホイスコーレンがあります。そこには自然豊かな敷地にある教室、体育館、屋内プール、食堂、宿泊施設、リラックスするスペースなどがあります。
フォルケは農民向けの学校がルーツ。大学や専門学校とは違い、試験や単位はなく、半年から1年ほど滞在する人が多いようです。対話重視で社会福祉、芸術、哲学などが学べます。デンマークには約70ありますが、エグモントはその中でも珍しい障害のある学生とない学生が共に学び、生活しています。学生はデンマーク人が中心ですが、日本人もいます。どんな障害があっても意思表示すれば、周囲が後押しするのが流儀とか。
エグモントで得られるのは知識や体験だけでなく、障害のある学生はここで介助者を雇い、必要な助けを伝えながら、社会で自立して生きるための準備をしています。障害のある学生の日中の介助は主に障害のない学生が担うそうです。障害のない学生は皆、学生ヘルパーとなり、障害のある学生1人につき平均3人ほどがシフト制などで担当しています。経験がなくても学びながら慣れていくOJTであり、自治体から時間に応じた費用が支払われる仕組みです。
エグモントを卒業した後、障害者がどんなことにでも挑戦できる環境で生活できるとは限りませんが、身につけた自信は必ず社会で生きてきます。大切なのは、インクルージョンの考え方をもち、周囲に付加価値を与えてくれることなのです。