校長ブログ
日本の美術品
2025.01.13
トレンド情報
1月13日
現在、国宝に指定された美術工芸品は900件以上、重要文化財は1万件以上あるそうです。所有者は財産を守るための様々な義務が課せられるものの、海外流出や所在不明の危険にさらされている状況にあります。
価値ある美術品を保護し、維持することは後に残された者の責務。しかし、美術品を維持するには、そのコストを保有者が支払わなければならないなどの負担があります。補助金を美術品のみにすると散逸しかねないリスクもあります。一旦海外に流出してしまうと買い戻すこと自体難しくなります。個人や法人に依存するなら税制優遇、国所有にするならインバウンドの呼び物になるようなものを作るなど、創意工夫が必要です。
ミュージアムでは貴重な文化財を目にする機会があります。しかし、文化財を所有する個人や法人が高齢化しているため、受け継ぐ人がいない、財政難もあるため、管理・保有できなくなったといった課題もあります。
ちなみに、国宝・重文は海外に輸出できませんが、十分な管理がなされなければ、海外に流出するリスクが出てきます。かつて、平安時代の「木造天王立像」が海外にある美術館の収集候補となった時には、文化庁が所有者を説得して買い上げ、重文に指定、海外流出を防いだことがあったそうです。しかし、運慶作「大日如来坐像」が米国のオークションにかけられた折には、所有者は国に売却を申し出たものの、予算の関係で断念、最終的には日本の宗教法人が購入しています。
所在が分からなくなるケースもあるようです。国指定の文化財135件が所在不明だとか。(2024.8.文化庁)同庁のウェブサイトには所在不明になった文化財を掲示し、情報提供を呼びかけ、発見されたものを買い上げたケースもあるようです。国が買い上げた作品は、博物館などに無償で貸し出されたり、文化庁主催のミュージアム等で展示されたりします。保存する体制として、文化財保護法では文化財の変更や輸出などに制限を課す一方、保存修理し、防災・防犯に必要な設備の整備を支援しています。文化財を買い上げる文化庁の事業は1968年にスタートしていますが、予算は減少し、近年、10億円程度で推移しています。増加する文化財を継承するには個人や法人の力が欠かせなくなっているのです。
文化財の指定条件は国によって違いますが、「国宝」と指定されたものはフランス、イタリア、中国、韓国などでも輸出は禁止されています。流出に関して罰金刑を科す国もあります。ユネスコの「文化財不法輸出入等禁止条約」には140カ国以上が加盟しています。