校長ブログ
ゲノム選抜
2025.01.23
教科研究
1月23日
家畜、魚、果物などを選んで増やすゲノム選抜の利用が広がっています。例えば、A5という最高等級の肉用牛など、高付加価値にする競争が激化していますが、それをゲノムが後押ししている格好です。
栃木県那町の那須牧場で育つ子牛の両親はゲノムをもとに選ばれています。いわゆるゲノミック評価ですが、これは家畜や農作物などについて、ゲノムにある無数の遺伝子変異(SNP)をもとに成長した際の姿形、可食部の形質といった遺伝的な能力を推定する技術のこと。ゲノミック評価では、雌牛の遺伝的な能力を数値化し、その特徴に合う雄牛を選んで人工授精するというもの。めざすレベルは、A4以上で大きく、可食部位が多く、筋肉質な牛です。
ゲノムには、個体ごとにSNPがあり、その組み合わせが肉質などに様々に影響を及ぼすそうです。ゲノミック評価は、約6万5000頭の肉質データ、そのうち約2万1000頭のSNPデータ、その個体に関わる25万頭の血統情報などをもとにしています。
例えば、雌の子牛を採血してゲノム評価した上で、優れた点を伸ばし、欠点を補ったりできる雄牛をあてがうといった具合。これまで雌牛は1年に1頭しか産まないので、何頭か産まないとその遺伝的な能力を評価できませんでしたが、ゲノミック評価で、生後すぐに雌牛の選抜ができるようになったわけです。効果は表れ、肉質については、全国平均以上の割合が7割を占め、飼育コストを削減できるようになったそうです。
最近では、A4・A5レベルの等級の肉が増え、さらに改良も進み、ゲノミック評価を応用して病気からの回復力や繁殖の成績なども評価しようとしているとのこと。ゲノミック評価はかんきつ類など果樹のほか、サーモンの養殖など様々な分野で取り組みが進んでいますが、ブランドとして定着している兵庫県の但馬牛は他県の牛との交配はしていません。
ゲノミック評価については、人工授精が禁止されるなど、競走馬の特殊な事業環境などもあり、興味があるともないとも知られたくないと言う人もいます。また、信頼に値する評価モデルを作るのにデータを集めるのも簡単ではなく、費用を誰が負担し、何の役に立てるのかということが明確でないと進まないという背景もあります。ゲノミック評価がブランド力を強化し、新しい流れを作りだすのかどうかの結論はまだ先になりそうです。