校長ブログ

言葉の壁

2025.01.14 グローバル教育
1月14日

 文科省によれば、外国にルーツを持つ高校生の中退率が平均の7倍を越えるそうです。今や、日本語の指導が必要な児童や生徒が急増し、学習支援や進学指導が急務になっています。母語による指導や入試での配慮など、対応しなければならない課題が山積しているのです。

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 愛知県は20264月から、外国ルーツの生徒指導や支援に力を入れる中高6カ年一貫校を設置し、母語を使って教えたり、相談に乗ったりする体制を整えています。

 具体的には、県立衣台高校(豊田市)と市立保見中学校が授業などで協力する連携型とする計画だとか。保見中は、自動車産業などで働く外国籍の親をもつ生徒が多く、生徒の母語であるポルトガル語で指導・支援してきた実績があります。そこで、この取り組みを高校と共有し、合同授業を実施するなどを通して進学を促すそうです。

 全国調査(文科省、2023)によれば、外国生まれなどで日本語指導が必要な小中高生は約69,000人と増加し続け、高校生は約5,600人、そのうち、中退率は8.5%、全高校生の7倍以上となっています。なお、大学や専門学校などへの進学率は46.6%であり、高校生全体の75.0%を大きく下回っており、非正規職への就職率38.6%は高校生全体の12倍。さらに、日本語の基礎を学ぶプログラムなどの指導を受けている生徒は76.3%であり、9割を超える小中学生よりも少ない状態となっています。

 小島祥美氏(東京外国語大学准教授)は、高校入試に合格できているため、指導が必要ないとする適格者主義の考え方があることや、義務教育ではないため、生徒の理解に合わせた指導をしなくてもよいといった意識があることを指摘されています。

 深刻な人手不足を受け、外国人労働者の長期就労や家族帯同に慎重だった姿勢が転換、配偶者や子どもを呼び寄せられる特定技能「2号」の対象業種が拡大されました。保護者に同伴して家族滞在として入国した場合、就労制限のない定住者、特定活動の資格を取るには高校卒業が条件となります。しかし、より柔軟な人材確保に向けては高卒の壁を取り払う支援が不可欠であることもまた事実です。

 神奈川県の高校入試では、「在県外国人等特別募集」を設け、実施校や定員数を増やしています。問題文に読み仮名を振るといった配慮も行い、受験資格を来日3年以内から6年以内に緩和しています。併せて、多文化教育コーディネーターを配置し、日本語指導や学習支援に加え、大学進学情報の提供や在留資格を踏まえた就職相談も行っています。現在、文科省は各自治体へのアドバイザー派遣と支援体制を拡充し、高校でのキャリア教育の実態調査も開始し、ロールモデルの事例周知などを推進しています。多文化共生理解に向けた取り組みが進められているのです。