校長ブログ

日本の教育問題を考える③

2025.01.06 トレンド情報
1月6日

 OECDの国際成人力調査(PIAAC)によれば、日本は読解力など3分野で2位以内を維持しているものの、数的思考力の平均点を年齢層別で見ると、1624歳が最も高く、その後は低下し続けています。文科省はその背景に社会人の自己啓発を行う割合の低さがあると指摘していますが、学び続けられる環境を作ることが労働生産性を高めることは言うまでもありません。

DSC00848.JPG

 調査は今回が2回目であり、対象は31カ国・地域の1665歳。日本は読解力と数的思考力で2位、初調査であった「状況の変化に応じた問題解決能力」はフィンランドと並んで1位です。文科省は、進学率が上がり、より高度な学びに接する児童生徒が増えたことが影響していると分析しています。

 3分野で上位を占めた北欧諸国がリスキリング(学び直し)を充実させ、数的思考力が3040代まで伸び続けています。平均は2534歳が最高であり、1位のフィンランド、3位のスウェーデンは3544歳が最も高く、同じく3位のノルウェーは2534歳がピークです。

 大学でのリスキリングへの経済的支援は手厚く、学び直しを望む社会人を対象にした職務経験を評価する入試も実施されています。スウェーデンは「教育休暇法」を制定し、修学のために休暇を取得した場合、休暇前と同等の労働条件、賃金で復職することを保障しています。ちなみに、仕事に関する再教育の参加率がフィンランド、スウェーデン、ノルウェーでは50%を上回り、労働生産性も高かったそうです。

 日本は、再教育の参加率が北欧諸国を約20ポイント下回る37%であり、生産性は北欧諸国の半分程度、37カ国中21位にとどまっています。また、公能力開発費(厚労省)はGDP比で0.1%。米国、フランス、ドイツに大きく差をつけられています。また、日本能率協会の調査(約600社)によると、リスキリングを経営課題と位置づける企業は76%になったものの、取り組みを始めているというところは16%です。

 経産省は、キャリア相談からリスキリング、転職までを一体的にサポートする事業をスタートしています。現在、日本でもジョブ型雇用に移行しつつあるデジタル社会ではリスキリングの重要性が高まっているのです。

 日本全体の平均点はOECD29点上回る289点であり、文科省は、前回2位だったフィンランドと順位が逆転した理由として、同国では修士や博士などの高学歴者が多く、高得点者が増えたことが要因の一つとしています。また、読解力や数的思考力が高いことが問題解決能力の高さにもつながっていると分析しています。