校長ブログ

ベストセラーのタイトル

2024.12.05 トレンド情報
12月5日

 ベストセラーになっている本のタイトルが長くなっているそうです。ちなみに、ここ数年の上位30冊は平均10.3字であり、1960年代に比べ2倍近く。ウェブ情報が溢れる中、読み手にインパクトを与えるためか長いタイトルのSNSやブログ発の書籍が多くなっているのです。ネット文化の影響と言えます。売れ筋も簡潔な書名の文芸書から実用書やビジネス書へと変化しています。

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 歴史的には、194060年代には、ベストセラーは文芸書であり、平均5字前後でしたが、197080年代になると、財テクなどのハウツー本の人気上昇と共に伸び始め、デジタル化が進む2000年代に入って更に伸びています。(出版科学研究所)頻出語で見ると、1950年代は文学や全集、197080年代にはミステリー小説やプロ野球関連、2000年代以降は「人生」「脳」「お金」など、個人の生き方に関わる言葉が増えています。

 かつては有名な経営者が執筆した本が売れていましたが、最近のビジネス書等は著者の知名度以上に、コンセプトで売れているようです。紙の書籍では表紙のイラストなどで作品の世界を表現できますが、投稿サイトでは見出しだけが読み手の判断材料になるとのこと。SNSの浸透で読者の好みも変化していくのです。編集者はSNSやブログから書き手をリサーチし、本を作ることが増えているとか。言い方を変えれば、無名の著者の本を売るために、書名で内容を説明する必要が出てきたわけです。

 タイトルが長くなる背景には、ウェブ上で書いて読む習慣も大きく関わっているようです。典型的なものとしては小説投稿サイト発の書籍化が考えられます。植村八潮氏(専修大学教授)は、ユーザーはスマートフォン上でタイトル名だけを見て直感的に好みに合う作品を選ぶため、作品を目立たせるためにタイトルが説明的になっていったとおっしゃっています。

 本の発行部数は、減っており、縮小する市場ですが、類書は溢れ、書名が差別化のポイントとなることは自明。最近のベストセラーのタイトルには、「もっと」「どんどん」といった副詞や数詞・句読点を含む記号の割合が増えています。書籍もコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスを求める時代になってきたのです。