校長ブログ
探究と大学入試
2024.11.15
教科研究
11月15日
大学教育と親和性が高い探究活動の実践と共に、高大接続のあり方にも変容が起こりつつある昨今。例えば、将来的に入試をすべてAO型にするという東北大のようなところも出てきました。探究がAO型入試等とどうつながるか注目されますが、留学生を含む多様な学生を受け入れることを考えた場合、質を維持しながら教科試験に偏った選抜の比重を下げていく必要があります。
山積する社会課題に対し、協働的な学びを通じ、教科横断的アプローチをはかり、最適解を導く探究学習。それによって生徒はどう変わり、進学にどのような影響を及ぼしていくのでしょうか。本校でも「総合的な探究の時間」に加えて、学校設定教科を設け、実験や発表を伴う学習にじっくり取り組む教育課程にしています。大学入試との関連で言えば、学校推薦型選抜と総合型選抜(旧AO入試)がその代表例。
一例を挙げれば、課題に取り組んだ生徒のパフォーマンスの高さ。生徒自身の自己肯定感の向上にもつながっていることは疑う余地がありません。探究では実験、発表など、生徒は様々な体験を積み重ねるわけですが、そこには5教科の学習成果とは異なる風景があります。教員からは、授業や部活動、生徒会活動とはまた別の生徒の能力を発見できたという声が聞こえてきます。
探究により学力が急激に伸びる生徒がいるのは確か。興味・関心の高まり、将来ビジョンの明確化などが要因として考えられますが、探究で身につけた背景知識や論理的思考力は自信につながっているようです。
探究型の課題研究を行うことで教科で必要とされる知識・技能が定着し、応用することを経験することができます。そして、教科の指導では育成しがたい資質・能力を伸ばすこともできるのです。教科で学んだスキルを使い分ける力は一教科の枠組みの中だけでは育めません。例えば、ある課題に教科横断的な面からアプローチしたものの、他教科の領域に踏み込まざるをえなくなったとき、教科の枠を前提にすると、それ以上のことはできません。つまり、別の教科のものに切り替える力を伸ばすのは、教科とは別の場でないと難しいということです。
一般入試で求められる学力と、大学が求める資質・能力が一致しないことがあります。入試科目となる5教科が必ずしも学部や学科での学修につながっていないということもあります。進路指導は生徒自身が将来をデザインすることを支援する方向にかじをきり、探究とキャリア教育を一体化しています。結果、生徒は入りたい大学に入るために己を磨き、総合型選抜などに対応する形が自然とできるというわけです。
探究で将来進みたい領域の課題研究に取り組めば、何が大切でどんな力を習得すべきかにおのずとたどり着けます。将来何がしたいかまで明確にすることができれば大学のアドミッションポリシーと合わせて偏差値によらない大学選びができるはずです。
教育現場の実態と言えば、平均年齢の上昇に呼応するかのように多くがその答えを持ち合わせていないことです。これまでの教育に疑いを持ち、どのような力をつけなくてはならないかを真剣に考える時期にきています。一般入試は汎用的スキルの高い生徒を選び出すことに一定の効果を上げていますが、非認知能力を評価することにも目を向け、日本の将来を支える若者に必要な資質・能力を明確化してほしいものです。