校長ブログ

AIの父にノーベル物理学賞

2024.11.13 トレンド情報
1113日

 米国のプリンストン大学のジョン・ホップフィールド氏とカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン氏のAIの基盤技術である機械学習の発見と発明に対し、ノーベル物理学賞が授与されることになりました。授賞式は1210日にストックホルムで開かれ、1100万スウェーデンクローナ(約16000万円)の賞金を両氏で分け合うとのこと。

DSC07107.JPG

 ホップフィールド氏は半導体研究などでも成果を上げ、脳の神経細胞の回路を模倣したシステムを発表、現代のAIの礎を築きました。ヒントン氏は心理学を学び、約半世紀にわたって世界のAI研究を牽引、教え子の多くが生成AIの開発を担っています。2013年から10年間、米グーグルに所属しています。両氏の取り組みから高精度な文章や動画像を生み出す生成AIが開発されたのは周知の通り。

 2人が貢献した人工ニューラルネットワークでのAIの技術革新と発展は、他の物理学をも進化させたと評されています。機械学習は画像や音声、文章などのデータの分類方法をコンピューターに学ばせ、分類精度を高めました。それは画像検索や音声認識で実用化しているだけでなく、自動運転車などにも応用されています。

 ホップフィールド氏は脳の神経細胞の回路を模倣したシステムを開発し、ヒントン氏はそのシステムを発展させた技術を1985年に発表しました。結果、与えられたデータから特徴を抽出して学習でき、現在の機械学習の礎となりました。それは1980年代のAIブームにつながっていきます。

 1990年代頃には一旦、下火になるものの、ヒントン氏は機械学習の一種である深層学習のアルゴリズムに関する論文を発表し、再びAIブームを巻き起こします。2012年には深層学習によって、画像認識ソフトウエアの世界的なコンテストで、写真に写った物体の認識の正確性を競い、記録を塗り替え、優勝しています。

 その成果は生成AIの開発にもつながっていきます。自然な文章や画像などを一瞬で生み出すAIを米オープンAIや米グーグルなどが開発し、スマートフォンやパソコンで簡単に利用できるようになりました。結果、仕事の生産性を高めるなど、日常生活や産業に大きな変革をもたらそうとしているのはご存知の通りです。

 AIは、もはや、生命活動にとって重要なたんぱく質の構造を正確に予測するシステムの開発、素粒子の研究、新素材の探索にも利用が広がり、科学研究でも欠かせない存在になっています。同時に、使い方によっては人類の脅威にもなり得るものであり、ヒントン氏はAIの影響が産業革命に匹敵する一方、制御不能になる危険性についても警鐘を鳴らしています。