校長ブログ

中教審の取り組み

2024.10.24 トレンド情報
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 中教審が教員の確保に向けて、待遇改善や働き方改革の推進などを盛り込んだ具体策を答申しました。教育現場では長時間労働が日常化し、深刻な人手不足に陥っている中、残業時間の削減などの見直しも求められますが、大切なのは社会全体の理解と協力。ちなみに、2022年度の公立小学校の教員採用試験の倍率は2.3倍であり、4年連続で過去最低です。

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 環境整備の面では、待遇改善、働き方改革、学校の指導・運営体制の3つが骨子。待遇改善については、残業代の代わりに基本給の4%を上乗せする教職調整額を10%以上にし、給特法(教職員給与特別措置法)を改正する案が出ています。ただし、教材研究や授業準備について、どこまでが職務なのか切り分けて考えることが難しく、現在の枠組みを維持することが妥当としています。いずれにせよ、待遇改善が進めば一歩前進することは間違いありませんが、働き方と学校の体制を整え、教師の魅力を高められなければ真の改革にはなりません。

 働き方で言えば、「勤務間インターバル」やテレワークなどの促進が提案され、校務のDX化の必要性が説かれています。学校の体制で言えば、小学校56年で実施している教科担任制を34年にも拡大することや若手を支える中堅向けポストの任用・配置を開始することなどが盛り込まれています。

 文科省によれば、女性の受験者は小学校が5割程度(2021年度)であり、減少の一途をたどっています。人材確保には出産、子育てへの配慮などが必要であることは言うまでもありませんが、大切なことは「見える化」に併せて、国や各教育委員会、保護者、地域など、社会全体が学校を支える意識をもち、改革に協力することが不可欠です。

 答申では残業時間を平均月20時間程度をめざし、「将来的に」という書き方をしていますが、段階的に数値目標を示すといった具体策が必要です。実態として、児童・生徒のために、時間をいとわず働く教員が少なくありません。その意味で、それぞれが当事者意識をもち、産官学連携で改善していく姿勢がつくれるかどうかが明暗を分けると言えます。

 OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は、今回の中教審の具体策をバランスのよいものと見なし、一体的に推進していくべきとしています。また、課題として財源をあげ、支出は未来への投資と述べられています。さらに、海外では長時間労働の削減や業務効率化に対し、英国では校務を一律に減らすのではなく、文書作成など、機械で代替できるものは削減し、フィンランドでは教員の裁量に委ねているなどの例を挙げられています。