校長ブログ

フィンランドの学校

2024.10.22 グローバル教育
1022日

 フィンランドは学力の高さで有名ですが、国際学力調査における成績低下を鑑み、協働学習ができる環境づくりや学習と日常生活を結びつけることを意識した授業など、改善を模索した取り組みを進めています。

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 例えば、「現象ベースの学習」と呼ばれる取り組み。これは教科横断型の学びのことで、日常生活で起きる様々な現象をテーマに据えて、課題解決の方法などを探究していくというもの。体験を重視したプロジェクト型の探究学習のことです。

 フィンランドでは、日本と同じように、子供の主体性を育む学びを大切にしています。伏木久始氏(信州大教授)によれば、フィンランドの子供を中心とした学びは1990年代に遡り、teaching(教える)からlearning(学ぶ)に変わっていったとのこと。同時に、脱中央集権化が進み、国の教育課程基準が大綱化、指導法について教員の裁量が拡大し、教科書検定制度も廃止となっています。個々の個性を尊重する考え方が子供中心の学びにシフトしていったのです。

 渡邊あや氏(津田塾大学教授)は、かつては教室内の規律や静かさを重視し、東アジアの伝統的な一斉授業が多かったものの、今では学び合いや教員との双方向のコミュニケーションを促す教室づくりにも変容していると述べられています。

 フィンランドでは、日本と同じように、廊下沿いに教室が並ぶ作りが多いのですが、それに加え、リビングルームのようなじゅうたんが敷かれ、ソファが並ぶ「ソル」と言われる空間を設けている学校があるとか。(ソルとはフィンランド語で細胞を意味します。机と椅子が並ぶ教室とは違い、オープンな空間はリラックスしながらマナーや立ち振る舞いを学べるといった効果も期待されているようです。

 2000年に実施されたいわゆるPISA調査では、フィンランドはすべての分野で上位4カ国に入り、世界中から注目されました。しかし、2009年以降は順位や得点が低下し、2022年には「読解力」は490点となり14位、「数学的応用力」は20位、「科学的応用力」も9位となりそれぞれ点数も大きく下がりました。教育関係者の危機感は想像に難くありません。

 学力低下に加え、デジタル化や移民の増加による多様性の高まりなど、様々な要因にも直面しており、新たな教育のあり方が求められているのは日本と同じです。共通するのは生成AIをはじめとする最先端技術を駆使した指導法。横並びの意識が強い同質性を求める体質から脱皮をはかり、最適な指導法を試行錯誤する方向性は日本も同じです。