校長ブログ
アートの世界
2024.10.11
グローバル教育
10月11日
イタリアのベネチア・ビエンナーレ国際美術展は、2年に1度開催される世界最古の国際美術展、今回で60回目を迎えます。STEAM教育でアートが見直される中、山積する地球規模の難題に対して、どのような表現方法を駆使するのか、注目すべきところです。
例えば、ナイジェリア系イギリス人であるインカ・ショニバレの「難民宇宙飛行士」シリーズには、紛争や環境問題など、誰もが難民になりうる現代社会の様相が象徴的に描き出されています。
「Foreigners Everywhere」をテーマに掲げ、南米出身の総合ディレクターのアドリアーノ・ペドロサ氏が手掛けたという国際展では、グローバル化が進展する現代、「外国人」はどこにでもいますが、そもそも国籍、性、民族など、既存の枠組みに合致する人間など存在せず、すべての人間が外国人の要素を持っているというメッセージが読み取れます。
ペドロサ氏は、クイア(性的マイノリティー)であることを公言し、歴史観が複数あることの提示が自身の役割とされています。国際展には、グローバルサウス出身の作家はじめ300組以上の作品が展示されています。欧米流モダニズムに含まれていない「新しい風」です。作家の大半が初参加であり、その半数以上が物故作家。多様なアーティストが、それぞれの歴史観で捉えた世界が開陳されています。「現代核」という展示では様々な個性の作家が選ばれ、「歴史核」という展示ではグローバルサウスを中心に20世紀を振り返るといった具合です。
ビエンナーレ国際美術展には国別パビリオンもあります。最優秀国別参加賞を受賞したのはオーストラリア館には、先住民アボリジニの作家アーチー・ムーアの作品「kith and kin(知己と親類)」が展示されています。キュレーターのイ・スッキョンが外国人として初めて担当したという日本館には、毛利悠子氏のコミカルな作品などが展示されています。地下鉄駅にある水漏れ対策をモチーフにした作品「モレモレ」では、ホースやじょうろなどの日用品でできた水路が天井からぶら下がっています。緊急事態に直面しても持ち合わせの道具だけで対応しようとするところに人間らしさが垣間見られ、気候変動という大きな危機に立ち向かう小さな現代人を想起させられます。