校長ブログ

地方の外国人材の実態

2024.10.04 グローバル教育
10月4日

 ある民間の調査で、地方にいる海外ルーツの方々のうち、就職・転職する際、今住んでいる地域に残ることを希望しているのは半数未満であることが分かりました。人口減が進む地方では、労働力確保は大都市以上に喫緊の課題であり、外国出身者を欠かすことはできません。当然、地域住民や企業と連携し、つなぎ留めを模索する自治体も出てきています。

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 例えば、長野県上田市。自治会や受け入れ企業などでつくる研究会が中心となって、技能実習が始まる前に、地元の風習を伝え、愛着をもってもらえるようにするために、着物姿で名所を散策するなど、外国出身者との交流を始めています。また、外国人材の定着に向けて、無料の日本語教室を始め、大人と子どもでクラスを分けるなど、きめ細やかな対応をしています。高知県は、ベトナムなどから来日し、約3年間働き、県認定の日本語教育機関で授業を受けた者を対象とした1人あたり30万円を支給する「定着奨励金」の制度もスタートさせています。

NINJA」を運営するグローバルパワーが高度外国人材や留学生ら42千人を対象にした調査によると、現在住んでいる都道府県と就職希望地が同じ人の割合では、賃金が高く、求人も多い大都市に外国人材が集まり、東京(51.7%)、福岡(51.5%)、愛知(49.6%)、大阪(48.8%)などの順位となり、最低の島根(9.4%)の上に、高知(15.4%)、徳島(15.9%)、香川(16.0%)となっています。

 在留資格「技術・人文知識・国際業務」(37万人)や人手不足対策の「特定技能」(14万人)は転職が可能であるのに対し、日本で技能を学ぶのを目的とする「技能実習」(41万人)の場合は、スキルを身につけるには同一の職場でという制約から3年間、別の職場に移れません。となると、地方企業は、流出の可能性が低い技能実習生で人手不足をカバーしようとするわけです。現在、技能実習生は、外国人労働者の20.1%ですが、宮崎(59.8%)、愛媛(53.1%)、高知(52.7%)などのエリアは高くなっています。

 しかし、技能実習は2027年には「育成就労」になる方向であり、そうなると、本人の意志で転職できるようになり、結果、流出が懸念されています。群馬大は県内の大学と連携し、留学生を地元企業のインターンシップや社会貢献活動などに送り出し、県内への就職率向上に寄与されています。同大学の結城恵教授(教育社会学)は、国際的な企業や暮らしやすさがあり、もっと良さを知ってもらう機会を増やすべきだと指摘されています。