校長ブログ
東大の1次選抜厳格化
2024.10.17
大学進学研究
10月17日
東大が2025年度入試から第1段階選抜を厳格化するそうです。具体的には共通テストによる絞り込みを強化し、2次試験を受験する人数を約1千人減らすとのこと。背景には、現在、大学が抱える課題と今後の入試のあり方に関する方向性があります。
これまで東大の文科1~3類は、倍率が約3倍になると第1段階選抜を実施してきました。しかし、2025年度からは約2.5倍に変更されます。同時に、理科1類は約2.5倍から約2.3倍、理科2類は約3.5倍から約3倍に変更されますが、理科3類の約3倍のまま。かつての倍率では約8,600人が2次試験に進めましたが、変更後は約7,500人つまり、約1,000人減ることになります。結果、文系理系ともに志願者は減り、それに伴い、次の層の大学の志願者が増え、難化することも考えられます。
厳格化の理由として、答案を減らし、より丁寧に採点すること、特別な配慮を要する受験生の増加に対応すること、基礎学力のチェックを重視することが挙げられています。併せて、教員の研究時間の確保など、働き方への配慮があります。これは東大だけの問題ではありません。実際、採点業務に数日間、1週間を要することもあり、負担はかなりのもの。文科省の研究者に対する意識調査(2023)によれば、入試業務が研究の制約となっていると考える割合は62%であり、会議・作業(77%)、講義・実習等の準備・実施(68%)に次いで多くなっています。
特別な配慮と言えば、障害者への合理的配慮を義務づける改正障害者差別解消法が施行されたことに伴い、入学機会を提供することが求められるようになってきました。東大の場合、受験者数を減少させることによって、別室受験や試験時間の延長といった措置がやりやすくなり、大学が掲げている多様性と包摂性の実現の可能性を高めるといった考えもあるようです。
過去5年間、2021、2023、2024年度は一部で第1段階選抜がなく、共通テストが900点満点中200点前後の受験生も2次試験に進みました。基礎学力のチェックの意味はここにあります。そうなると、2次試験が得意な受験生はどうなるのかという問題が生まれますが、共通テストと2次試験には相関があり、2次逆転の道を閉ざされる受験生はほとんどいないそうです。
海外を見渡すと、米国の大学では入試は専門の職員が担当し、教員が中心となり運営する日本のやり方は奇異に感じるようです。日本では大学教員が作問し、丁寧に採点することが慣例となってきました。そうすると、当然、働き方という点で課題が生じます。
グローバル化が進むと、研究型大学は、入試を変容させることを考えなければなりません。東大は、学部の留学生比率を30%まで高める目標を設定しており、教員以外のスタッフが担う部分を増やした上で、「グローバル入試」を導入するとのこと。大学入試のあり方は、グローバル化に連動することは自明なのです。時代の潮流を見据えた入試制度の再構築はすべての教員関係者の義務なのです。