校長ブログ

漁獲量規制

2024.09.02 教科研究
9月2日

 世界では魚の需要が増え、持続可能な水産業が求められる中、日本では海の幸が食卓から遠のいているようです。昨年の漁獲量は過去最低を更新し、5%減の372万トンとなっています。サンマは5年間で8割減、スルメイカは6割減、サバは5割減、養殖のノリやワカメも過去最低。長びく不漁は水産業の経営を悪化させ、漁師の数も平成の30年で6割減ったとか。魚がとれず、漁師も減るという危機的状況です。

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 世界では需要が増え、1人あたりの年間消費量は2000年以降、約20キロへ2割増え、生産量も養殖中心に伸び続けています。かつて資源に苦しみつつも、復活した国にノルウェーがあります。ノルウェーは150カ国以上に輸出し、輸出額(2023)は26000億円は日本の約7倍であり、資源を管理し、利益を向上させている点では成功しています。

 ノルウェーは、持続可能な漁業をめざし、資源管理に加え、品質を向上させ、販売先を拡大しています。科学者が海の資源量を調査し、データに基づき漁獲可能量を設定し、船ごとに枠として割り当てた結果、次第に海に魚が戻ってきました。漁獲上限を設けることで、同じ量なら脂がのるなど、価値の高い魚をとるようになり、単価高で漁獲金額は5倍に伸びたとのこと。量から質への転換を図ったわけです。

 日本でも様々な工夫が見られますが、漁師不足という問題もあります。現在、漁師の4割が65歳以上とのこと。技術を習得するだけでなく、船・漁具の購入費用もかかり、漁業権の取得も大きな課題になっています。山口県は、技術研修を強化し、親方漁師から学ぶ長期研修制度や親方向けの「新人漁師育成マニュアル」もまとめるなど、就業率向上に向けて工夫しています。

 海洋環境は絶えず変化し、気候変動の影響も大きい以上、漁業自体が不安定であり、その対策の1つが養殖業での最新技術の導入。近年、猛暑で海水面が30度近くに達し、赤潮で魚が死滅する被害も増えています。クロマグロやカンパチなどの養殖で有名なマルハニチロは、鹿児島県錦江湾に浮沈式大型いけすを導入。データを蓄積し、より健康的に飼える方法を模索しています。

 理研ビタミンは長崎大学などと共同でコンブの大規模養殖技術を研究しています。食用だけでなく、CO2の吸収源となるブルーカーボンの調査研究も進めているとか。水産業や海洋自体のポテンシャルを開花させるにはものづくり企業など、他産業との連携が不可欠なのです。