校長ブログ

ロケツーリズム

2024.08.21 トレンド情報
8月21日

 映像作品のロケ撮影を受け入れ、ファンの集客を目指す観光戦略をロケツーリズムと言います。SNSで発信することなどによって、訪れる観光客が増え、新たな名所として認知されるようになることもあります。誘致や制作支援を担うフィルムコミッションは国内に120以上あります。

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 映画『ロード・オブ・ザ・リング』が撮影されたニュージーランドではロケ地を巡る観光ツアーが組まれ、経済成長につなげる取り組みが行われています。また、タイでは制作費の一部を補助するだけでなく、バンコク近郊ではスタジオが設けられ、ハリウッド系の大規模作品を受け入れていれています。英国、韓国、カナダにも同じような補助制度があり、台湾やオーストラリアなどアジア太平洋地域も誘致に積極的です。

 しかし、国際的な映画やドラマのロケ撮影の誘致について日本は出遅れた感があります。6日間で900万回再生されたという関ケ原の戦い前夜を描いた『SHOGUN将軍』の撮影は当初、国内が検討されていたものの、条件が折り合わず、カナダになったそうです。

 遠藤周作の小説が原作であり、長崎の隠れキリシタンを描いた映画『沈黙(サイレンス)』も台湾で撮影されたとか。誘致がうまくいかない理由として、補助金制度と撮影許認可が主要な課題と挙げられています。また、従来よりも許認可は得られやすくなったものの、役所や警察、消防の許認可の手続きもたいへんなようです。

 ロケ誘致の経済効果は大きなものがあり、撮影陣の移動や宿泊の効果とロケツーリズムの効果があるようです。政府はロケツーリズムなど10年で2兆円の経済効果を見込み、1作品当たり最大10億円の補助金を創設するなど巻き返しを図っています。

 誘致が地域振興につながるかどうかは未知数の部分があり、海外作品の多くは東京の繁華街や京都の神社仏閣といった風景のカットを希望されるので、オーバーツーリズム(観光公害)といった問題が発生することもあるそうです。人気漫画『スラムダンク』で登場する鎌倉市内の江ノ電の踏切には海外からもファンも殺到するため、車道や私有地への侵入などの苦情が相次いだという事案もありました。

 一方、うまくいった例としては、主人公が新宿の歌舞伎町を舞台に活躍する『シティーハンター』があります。新宿観光振興協会が窓口となり、街や行政との調整を行った結果、現地での撮影を実現させています。少年少女が集まる「トー横」も当初は撮影が認められていませんでしたが、エキストラで演者を囲い、人混みとの接触を防ぐなど、様々な工夫を行っています。同作品の中に名前は登場しないものの、神戸市も撮影陣の宿泊費などで1億円以上の経済効果をあげたそうです。例えば、神戸フィルムオフィスは日頃から市民や商店街の理解促進に注力しています。関係者の理解とバックアップが最大のポイントなのです。