校長ブログ

理系女子を育てる企業

2024.07.26 トレンド情報
7月26

 AIやデジタル技術の活用が広がり、優秀な理系学生の採用競争は激化しています。最近では自ら女性エンジニアを育成する企業が出てきました。例えば、ソニーグループは、女子中高生向けにAIなどの技術に関する授業を提供し、理系女子の育成をめざしています。具体的には、年間で最大120万円を支給する返済不要の奨学金を創設し、給付学生と協力しながら中高生への情報提供を進めるとのこと。また、セイコーエプソンも女子社員と在学生の座談会を開催し、エンジニアなどをめざす人材を育成しています。

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 ソニーの奨学金制度は理工系で学ぶ女子学生を対象とし、今年は大学1年生、高等専門学校から進学した3年生に支給します。人数は年10名程度とし、授業料にあたる額を最大120万円まで給付する計画だとか。奨学金の支給は2年目以降も続け、大学生は4年間、大学院院生は6年間、高専出身者は2年間支給されます。

 また、ソニーへの入社も義務づけず、返済も求めない一方、給付学生には中高生向けに開くイベントでは協力してもらうことを条件にしています。同社は、奈良女子大と連携し、AIやメタバースの技術を学ぶ授業を展開したり、ソニーの女性技術者と交流する場を設け、働き方やキャリアに関心を持ってもらい、理系女性の成り手を増やす取り組みをしています。結果、今春、同社に入社した理系人材は3割が女性だったそうです。

 信州大学工学部でもの作りの講座を設け、学生の関心を高める取り組みを行っているセイコーエプソンは、理系の女子学生を対象にした会社見学や年齢の近い複数の女性社員との座談会も実施し、企業の取り組みと学生のニーズをマッチさせ、理系女性の採用は広げていこうとしています。

 経団連の調査(2022)では、理系女性の採用を拡大する方向と回答した企業は6割を超えているのに対し、大学(院)卒の新卒採用全体に占める理工系女性の割合が3割未満と回答した企業は全体の89%。文科省の調査によれば、大学生に占める女子の割合は全学部で46%(2023.5)であるのに対し、工学部で16%、理学部で28%にとどまっています。OECDの統計(2021)よると、高等教育機関の卒業・修了生に占める日本の女性比率は自然科学・数学・統計学の分野で27%、工学・製造・建築分野で16%であり、いずれも加盟38カ国の中では最下位です。

 文科省は大学入学者選抜において、「多様な背景を持った者」を奨励し、その対象として、理工系分野における女子に言及しています。少子化が進む日本ですが、企業にとって理系女性の育成は経営に関わる重要事項。日本の産業力を底上げするためには、ダイバーシティー実現の重要性が増しているのです。