校長ブログ

社会貢献を仕事認定

2024.07.13 トレンド情報
7月13日

 最近、中小企業やスタートアップ企業の中に、社会貢献活動を業務に換算して給与を支払う動きがあるとか。例えば、宅配ボックスメーカーのナスタという企業は、労働時間の1割までを社会貢献の活動に費やすことを認めています。社員の自主性を養い、組織力をレベルアップするとともに、定着率を高める工夫です。

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 同社では約400人の社員全員を対象にしており、時間の使い方は本人に任せています。年間の就業日数は約250日あり、社員は最大25日前後を使うことができます。平日の午前や午後を使ったり、一度にまとめて取得したりするなど、様々なケースが考えられますが、例えば、地震の復興支援など、地方に行く必要がある時は出張費を支給することも検討しているそうです。

 また、会社から高齢者の孤立、子供の貧困といった社会問題へのアプローチも提案したり、事業に支障がない限り、他社への業務支援なども可能であり、使った時間は申告制になっています。活動内容はリポートにまとめ、会社に提出、内容によっては定期的に優秀賞を決めて、活動奨励金を支給するそうです。

 このような斬新な取り組みには、コロナ禍で赤字を計上した折、数値による目標管理制度を導入したところ、有望な若手が退職したという背景があるようです。そこで、社員に重視したいことをヒアリングし、社会貢献への関心が高かったものからスタートしています。

 当初からボランティア活動だけで制度を使う人が増えないと難しいと考え、入社1年半の社員の提案で、社会貢献活動を業務に置き換える発想に至っています。同社は、社員に対し、社会課題を意識し、問題解決につながる取り組みを考えることを奨励しています。ここはまさに中高で展開している探究活動に相当します。

 ソフトウエアを開発するゆめみは、地域や企業からの支援要請に応えて、社員が支援に回る「社員借り放題制度」を導入。さらに、業務時間の10%を各自のスキルアップ使う「10%ルール」を採用しています。

「社会意識に対する世論調査」(内閣府)では、社会に役立ちたいと思っていると答えた人は、18〜59歳の層ではいずれも60%を超えています。これまで、日本でもパナソニックやサントリーなどが企業の社会的責任活動の一環などとして、地域貢献やボランティア活動を推奨しています。海外で本業とは関連しない活動認める例としては、グーグル(米)の「20%ルール」があります。

 いずれにせよ、社員に選択肢を与え、チャレンジを促し、個の力を伸ばそうとする会社は、離職率を低下させます。そして働き方改革やウェルビーイング(心身の健康や幸福)にも直結させ、組織力を高め、社会課題に敏感な若者の採用につなげることを可能にするのです。