校長ブログ

高専や大学の改革

2024.07.09 大学進学研究
7月9日

 金沢市にある国際高等専門学校が卒業時期が異なる海外の学校の卒業生を受け入れる高専初の秋入学を導入、2025年度から1年次の10月編入として若干名の募集を開始します。

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 国際高専は金沢工大が設置する学校であり、全国に4校ある私立高専の一つ。定員は35人であり、15年まで66名が在籍しているとのこと。12年は全員が寮生活を送り、3年次の留学を経て、45年生は金沢市のキャンパスで学ぶそうです。

 高専の入学時期は4月と決められています。秋に学生を募集する場合は定員を設定できず、若干名の編入という形になります。ものづくり現場の技術者を養成することをめざしている高専もグローバル化が求められており、成果が出れば制度の見直しの議論につながる可能性濃厚です。

 試験は3月下旬、面接や書類審査による1次試験が行われ、6月末の2次試験の結果で合否を決めるとのこと。完全な秋入学ではなく、途中編入であるため、卒業は4年半後の3月となります。対象は東南アジアのインターナショナルスクールなど、英語が堪能な生徒であり、試験はすべてオンライン。1次は面接、2次は1年生の前期の学力があるかどうかを口頭試問でチェックします。

 同校は国語と歴史以外は英語で行い、工学、数学、芸術などを教科横断的に学ぶSTEAM教育も英語による実践です。12年の教員の大半はネイティブ、3年時にはニュージーランドに1年間留学するシステムとなっています。特色ある教育を展開することによって多様な学生を受け入れ、時代の要請に対応した取り組みを行っているのです。

 大学に話を移します。東大が授業料を2割上げる検討案を示しました。文科省は国立大の授業料の標準額を年535800円とし、最大で20%まで引き上げられるようにしています。東大は世帯収入に応じた経済的支援の拡充も併せて検討中だとか。大学側の主張は、国からの運営費交付金が減り、設備の老朽化や物価、光熱費、人件費の増大などに対応しなくてはならず、教育環境の改善は必至というもの。授業料収入はグローバル化やDX化の推進に充てたいそうです。進学機会の格差拡大につながると反対する声もあります。

 検討案は、授業料の上限である642960円。経済的に困難な学生の授業料全額免除については、世帯収入年400万円以下の学部生ですが、600万円以下の学部生と大学院生に対象を広げることなどを視野に入れています。また、600万~900万円の学生についても状況に応じて一部免除とすることも検討しているそうです。

 値上げには賛否があり、教育や研究の充実という点では全く足りていないとする意見がある一方、格差の拡大につながるとの意見もあります。総長対話では反対の声が大半を占め、学生アンケートも9割が反対だったそうです。東大の調査(2021)では、保護者の世帯年収は1050万円超が4割、関東出身は55%と半数を超えており、授業料が上がれば、地方の学生などのアクセスがますます困難になると懸念しています。

 物価高などで研究や教育のコストが高まる中、国からの運営費交付金は減少傾向にあり、国立大を取り巻く環境は厳しさを増しています。国立大学協会は財務状況が限界にあるという声明を出し、増額に向けた社会の支援を求めています。