校長ブログ
教育コスト
2024.07.05
トレンド情報
7月5日
国立大と私立大の授業料格差を巡る問題と併せて、教育の質を高めるコストについての議論が続けられています。少子化の時代、今後の大学のあるべき姿を考えるポイントは、質、量、アクセス、コスト。質とは教育内容、量とは大学の数や定員、アクセスとは教育機会の確保、コストは費用のことです。
中教審は、2040年以降の高等教育の将来像について検討を重ねていますが、特別部会の伊藤公平氏(慶応義塾塾長)は国立大の学費を年間150万円に増額すべきと提言されています。そうなると、現在の学費の3倍程度となり、家計の負担増が見込まれます。
教育格差が広がることについて、同氏は、科学技術、特に、生成AIによる研究開発は今後より一層、進展することが予想され、それを凌ぐ人材を輩出する高等教育が求められていること、また、日本の大学生は授業以外で勉強する時間が少なく、3年から就職活動が活発化するような環境になっている現状では高度人材は育たないこと、そして、新卒を企業が鍛えるというモデルは破綻していくことを述べられています。
大学教育には、学生1人当たり、ミニマムで年300万円が必要であり、国立大の学費は年平均53万5800円、230万円程の公費支援で約290万円になるものの、それだけでは不十分であり、肝心の教育水準を高めるには学費を上げるしかないと主張されています。国立大の学部生は全体の16%。その学費を国民が持ち続けるのではなく、受益者負担でまかなうべきと言及され、経済的に困る人には、給付型奨学金を充実させるべきと付言されています。
提言は、大学教育の質を向上させるには、公平な競争環境を整えることが不可欠、国公立大に公費が投入されるのは当然であるが、自己負担の額を平準化させることで、健全な協調と競争が促進されると述べられています。進学率が低い県や若者の流出が激しい地方の国立大は空洞化を避けるために、首都圏より安価にし、学費をコントロールすることで、公平な競争環境を作ることが大切とコメントされています。加えて、給付型奨学金の充実を挙げ、授業料が上がりすぎないようにすることも重要としています。
今回の提言は、グローバル世界に通用する大学教育の質的向上にはリソースが必要であることを焦点化したものですが、広く社会にも問うべき課題であることは疑う余地がありません。