校長ブログ

デジタル教科書

2024.07.02 EdTech教育
7月2日

 電子政府で知られるエストニアは、教育の分野でもデジタル化を進め、10年前にデジタル教科書を本格導入しています。今や、動画や音声の機能を使って学ぶのは自然の風景となり、デジタル教科書を1カ月に30回は更新するレベル。インターネットのクラウド上で学校と教科書会社がデータを共有し、最適な学びをファシリテートしています。国際学力テスト(2018)でいきなりトップクラスに躍り出て世界を驚かせています。

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 教科書会社は、使用する頻度の高い問題や間違えやすい問題を収集、分析し、練習問題を組み込むだけでなく、動画や画像などにも工夫を凝らし、精度の高いテキスト構造にしています。内容も大統領の交代や科学の新発見など、最新の情報を盛り込むことによって学習効果に直結させています。今や、パソコンやタブレット端末で使うデジタル教科書が世界で急速に広がる時代。デジタル教育出版市場が2035年には6.6倍(2022年度比)の885億ドル(約13兆円)になると予測されています。(SDKI)

 欧米では教科書の内容を縛る規制がなく、見直した国も少なくありません。エストニアも2000年代に検定を廃止。各自で授業内容を決められるなど、教員や学校の裁量の大きさもあるとのこと。

 学力で高いとされるフィンランドは、教科書のデジタル化を打ち出し、学校や教員が最新のものを選べるようにしています。結果、企業の競争を促し、デジタル教科書のみを発行する新興企業が生まれています。首都ヘルシンキにある小学校ではすでに、全教材をデジタル化する計画を打ち出したとか。保護者からの反対で中止したものの、市当局は前向きな取り組みととらえ、試行錯誤が新たな指導法を生むと評価しているそうです。

 そのような背景の中、日本では2024年度から小中学校の英語で希望校に対し、デジタル教科書の無償配布が始まりました。しかし、デジタル教科書は、法律で内容からレイアウトまで紙と同じです。また、学習指導要領の改訂はほぼ10年ごと、国による教科書検定はほぼ4年に1度、地域ごとに決められた教科書を使うのが慣例であり、規律や画一性が重視されます。その意味で、社会の最新情勢を取り込むのが難しいのは事実。時代の趨勢に対応する斬新な教科書が生まれにくくなっています。デジタル教科書の本格的な普及を控えた日本にとって、失敗を批判しすぎない学校文化の創造が世界と足並みを揃えられるかどうかのキャスティングボートになっています。