校長ブログ
ビッグデータによる授業改善
2024.06.29
グローバル教育
6月29日
生徒の行動や態度が最高水準にあると評価(2022)される英国では、データを分析する担当者を学校に置くのがふつうです。教員は、データを基に生徒の苦手科目の克服を考え、補習・家庭訪問の必要性を判断するという具合。
英国の学校がデータを重視し始めたのが1990年代後半から。背景には、国が学校の情報を集めて審査機関が評価、著しく低い場合は閉鎖勧告する制度があり、学校は存続へ教育を改善することが求められることが事情があります。
データを活用した指導法は、同じ教室にいても個々の到達度に応じて指導する個別最適な学びを根付かせています。データがなければ、今どきの多様な子供に対応することは難しいことは自明です。子供一人ひとりの到達度を知り、誤答の原因や積み残しを把握することで個別最適化された教材や課題を提示する仕組みができているわけです。
成績が伸びた学校を対象に、その要因を分析した調査ではデータや研究成果の活用奨励と評価方法の改善がともに約3割を占めたようです。その意味で、教師の経験頼みだった指導からの変容の萌芽が見られます。
アリゾナ州立大は、17万人分に及ぶ履修データから本人の希望に添い、表示結果をもとに最適な専攻を勧めるシステムの導入を進めているとか。また、留年や中退を減らすため科目選択の支援システムを10年以上かけて整備し、卒業率を約20ポイント高めたとのこと。
日本では、大阪府箕面市が市立の6小中学校の教室に可動式カメラを設置し、児童生徒と教員が発話した割合や目線の動き、挙手率などをデータ化して授業改善に努めています。(本校も360度カメラを導入しています)教員の振り返りとして、個別対応の重要性の再認識とデータに基づく改善点を指摘はわかりやすいという声があるそうです。
一方、データの活用拡大を懸念する声もあるのは事実です。東京都世田谷区は、小中学生に配った学習用端末の検索履歴を学校側が閲覧し、悩みの把握などに役立てようとしたことに対し、批判を受け、計画を取りやめています。文科相は実態を踏まえ、保護者の十分な理解を得ながら進めることが肝要である、一律の解はないとしていますが、まだまだ世界に追いつくまでの道のりは険しいようです。