校長ブログ

日本の大学

2024.06.08 大学進学研究
6月8日

 日本の大学の国際化について、ボストン・カレッジ(米)の名誉教授であるフィリップ・G・アルトバック氏は、大学の取り組みを評価しつつ、欧米からの留学生が低調であり、日本のポップカルチャーの人気がやや落ち、K-POPに代表される韓国の文化が注目を集め、韓国語を学ぶ若者が増えていることを指摘されています。

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 アジアからの留学生は増えており、その多くは日本に残りたいと考えているものの、移民受け入れにはまだハードルが高いと述べられています。留学がよい仕事を得るためのメリットにはならず、学生は以前の世代よりも海外への関心が薄くなってきている中、大学はこうした問題に立ち向かっていかなければならないとしています。

 英語コミュニケーション力では、韓国や台湾と比較すると日本は劣っており、かつて通訳がいた中国が今ではいなくなった例を挙げられています。大学の国際競争力においても、日米共にトップクラスの大学は競争力が安定しているものの、世界ランキングで見ると、中国、シンガポール、オランダ、韓国などが躍進していることを言及し、多くの国では公的資金をトップ校ばかりに投入したため、それ以外はランキングの順位も下降してしまったと考えられています。そして、ほとんどすべての国は教育と研究により多くの資金を投じ、より多くの財政的な支援が必要と認識されるべきと主張されています。

 日本では学生の80%近くが私立大に通っており、その多くは規模が小さく、人口が急速に減る地方に位置している点、これらの大学をどう維持して質を保つかという点を問題視されています。ボストン近郊では、すでにいくつかの私大が合併し、コンソーシアムを作って運営にあたる例を挙げ、大学の縮小は避けられないものとし、それをいかに計画し、最小限に抑えていくかをポイントとしています。

 10兆円規模の大学ファンドの運用益を国際卓越研究大学に分配する制度については肯定的な見解を示し、資金の使い道を大学側が自由に決められるようにすることが大切としています。コロナ禍での国際交流は元に戻りつつあり、変化したのはキャンパスでの学習と遠隔学習を組み合わせたハイブリッド型を選ぶ学生数が増えた点とし、それに伴い、技術も進歩し、遠隔教育の質も向上したと見なしています。

 長く世界トップランクにいる米国の大学については揺らぐリスクはないとし、約4,000ある高等教育機関のうち、約500にのぼる安定した研究大があり、急激に伸びている外国の大学と競争していく難しさはあるかものの、衰退することは考えにくいとしています。

 日米の高等教育を比較すると、米国は約100年、日本は戦後、システマティックな教育実践が成果を上げてきました。さらなる発展に向けて、チャレンジすることが突破口となるはずです。