校長ブログ

ロボ人材育成課程

2024.06.05 EdTech教育
6月5日

 奈良県宇陀市がIT先進国である北欧のエストニアにおいて、ロボット工学の専門家を育成する留学プログラムを2025年からスタートさせます。現地の企業や大学とも連携した3年間のカリキュラムであり、毎年、全国から20人の留学生を募集するそうです。

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 過去の事例を見ると、自治体が地元の学生の留学を支援することはありましたが、全国から希望者を募り、留学先を設けることはあまりありませんでした。宇陀市は、現地企業の拠点を市内に誘致し、卒業生の職場づくりも計画しています。修了するとエストニアアントレプレナーシップ応用科学大学の学士号が取得できます。

 同市には農業のほかプラスチック製造などの産業がありますが、働く場所が少ないことが人口減少を加速させる要因となっています。ロケーションは、奈良県の北東部に位置し、大阪への通勤も比較的便利であるため、以前はニュータウン開発が進みました。しかし、少子高齢化が進み、約27,000人いた人口が4町村合併時(2006)よりも1万人以上減少しています。国立社会保障・人口問題研究所によれば、2050年には約12,000人まで減ると見込まれています。その意味で、IT先進国からの先端人材呼び込みは市の活性化に資する取り組みとなるわけです。

 留学プログラムは「クレボンアカデミー」と呼ばれ、現地で自動運転技術やロボットを開発しているクレボン社が行なっている研究と実習を組み合わせたものを基本にしており、ロボット工学のソフトウエア開発を学べるようになっています。クレボン社は、欧州で自動運転車による配送事業などを拡大しており、テキサス州にも米国本社を置くなど、世界展開を進めています。

 学費は受益者負担ですが、負担をなるべく抑え、市在住者には奨学金を支給する予定だとか...。資金は市と協賛企業が提供することで調整されており、募集や派遣、アカデミーを運営する組織も立ち上げていくそうです。

 市はグローバルな視点と起業精神を育むアントレプレナーシップ教育を推進しており、人口あたりのスタートアップ数がEUトップのエストニアに注目しています。すでに、サーレマー市と連携覚書を結んだ他、市内の中学生10人を短期留学で派遣しています。

 1期生が卒業する2028年を目処に、事業所の誘致をめざし、卒業生の受け皿にするだけでなく、先端分野の立地によって若い人材や新産業を呼び込みたいと考えています。また、アントレプレナーシップ教育を実践していることを認知させることで、街づくりが進むことを期待されています。