校長ブログ
AI講師の誕生
2024.06.26
EdTech教育
6月26日
デジタル技術の進展は日進月歩。今、世界の教育現場に生成AIが浸透し、日本でもデジタル教科書が本格導入されます。AIに対する学校の向き合い方が変わり始めたのです。
ハーバード大(米)でコンピューターを教えるデビッド・マラン教授らはAIを「講師」に採用。基本的な問いへの回答はAIが担当し、学生と教員は深い「思考」を要する問題に集中することをねらいとし、半年で7万人以上が数百万件の問いに答えているそうです。同大ではフランス語の授業でもAIを活用、対話させたり、論文の大枠を書かせたりしているとのこと。科学教育を統括するクリストファー・スタッブス教授は、10年後には日常の大部分にAIが入り込んでくることが想定されるので、大学の役割としては、学生にAIの適切な使い方を教え、より早く、よく学べるようにすることが大切と述べられています。
教室に同じ年齢の児童や生徒を集め、画一的な内容の事柄を教える現代の学校のやり方が広まったのは18世紀の産業革命から。技術革新が経済成長を左右するデジタル社会が到来し、メタバース(仮想空間)や遠隔学習、ビッグデータと、個別最適な学への転換が求められる今、大量生産による工業化と近代化を進める際にベストを考えられた手法では通用しなくなるのは自明です。黒板とチョーク、紙のノートが中心だった教室の風景も電子黒板や学習用端末の利用が日常になったのは周知の通りです。
生徒個々の到達度に合わせ、問題の難易度を変え、ニーズに合わせた対応をする生成AIは教育現場の転換をさらに加速するでしょう。文科省が昨年、学校での取り扱い方に関する指針をつくり、モデル校を選んだのがその査証です。
ヒト型ロボットが英語で生徒と英語で対話し、レベルに応じた学習ができるようになり、結果、英会話に積極的になったり、AIに生徒と異なる考え方を出させ、公民の授業の討論を活発にするなどの事例も報告されています。一方で、AIに依存しすぎると思考力が低下し、AIの情報に振り回されて精神面の不調を起こすなどのリスクも俎上の載せられており、G7(主要7カ国)も教育相会合で負の影響に対応する必要性を指摘しています。
いずれにしても、重要なのは変革に挑むチャレンジ精神。OECD(経済協力開発機構)のアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は、学びのあり方が現状維持なら生徒は一流の人間ではなく、二流のロボットにしかなれないと述べられています。教育のDX化が実現できるかどうかは生成AIへの対応がキャスティング・ボートになることは疑う余地がないことなのです。