校長ブログ

通信制高校への企業参入

2024.05.22 トレンド情報
5月22

 通信制で学ぶ高校生は増加の一途をたどっています。少子化の影響で、全日制や定時制の生徒数はピークの1989年の半分になりましたが、通信制は1.6倍。高校生の12人に1人が通信制に通うと言われる現在、2000年代の規制改革以降、私立の通信制高校は20年前の3倍になっています。背景にあるのは不登校の増加。文科省によれば、小中学生の不登校は29.9万人(2022)と過去最多であり、高校も6万人と、前年から2割増えています。

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 手島純氏(星槎大学教授)は、従前の学校は明治時代以降の一斉授業からあまり変わっていないと指摘されています。そして、通信制には仮想空間と現実を高度に融合させ、一人ひとりに最適な学びを実現した学校もあると述べられ、教育の目的とする人格の完成を各校でどう実現させるかが重要とも言及されています。

 近年、多様性を重視し、画一的な教育が変容するきっかけとして企業による学校運営が行われるようになってきました。リクルート出身の日野公三氏は、個別最適な学校づくりを目途に、通信制のアットマーク国際高等学校を2004年に設立しています。ここは構造改革特区を活用して株式会社がつくった最初の高校。同校の授業はネットを使うなど、学びの自由度は高め、生徒個々に何を学びたいかを真剣に考えるというのが特徴となっています。また、学習障害の一つであるディスレクシア(読み書き障害)などの発達障害にも対応した別の通信制高校も作られています。学校法人角川ドワンゴ学園が2016年に設立した通信制のN高等学校に通う生徒数は2021年開設のS高等学校と併せると27,000人を以上。ネットで学ぶコースだけでなく、全国69のキャンパスに通う仕組みもあるとか。2023年春の卒業生は3割超が大学や短大に進み、私立大だけでのべ1,545人が合格しているそうです。

 通信制の課題の一つが費用と言われています。学びリンクによると、私立通信制高校の学費は25単位履修の場合で年平均44万円。定額制で週5日の通学コースを選ぶと88万円であり、私立の全日制に比べ、倍とのこと。広域通信制は生徒が全国で学べますが、認可や監督は本校がある自治体が担うため、目が届きにくいとの指摘もあります。また、通信制高校で不登校になり、休学・中退する子どもたちがいるとも言われています。しかし、それでも不登校の子どもの選択肢として通信制高校が果たしてきた役割は大きいのは事実です。

 働き方改革やデジタル技術の進展とともに、学校が提供できる教育の幅も広がり、生徒の選択肢が増えてきたことは言うまでもありませんが、個別最適な学びから協働的な学びへの仕組みづくりはすべての学校に共通する課題なのです。