校長ブログ

理系学部の定員増

2024.05.20 大学進学研究
5月20日

 今年から4年間で大学の理系学部の定員が11千人増えるそうです。文科省が承認した背景には、デジタルや環境分野の人材を育成し、国際競争力を高めるというねらいがあります。

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 大卒で理工農を含む自然科学系分野の学位取得者は、現在、約21万人であり、これは学位取得者全体の35%にあたります。他国と比較すると、英国の45%、ドイツや韓国の42%より低いのが現状。国は2032年までに約5割に引き上げ、31万人とする目標を掲げています。

 文科省は理系学部の増設支援に向けて3000億円の基金を設け、対象を公募しました。結果、大学全体の8分の1にあたる106校の定員を見直し、計画を了承しました。今年の夏には2回目の公募を行います。初めて理系学部を設置する大学は106校のうち約3割。将来的には、文系の学生が副専攻で理系を学べる仕組みなど、文理融合につながる方向性も模索しています。そうなると、文系は生活科学系など、志願者が少ない学部は縮小し、理系学部への再編対象となる可能性が出てきます。

 今年は16校の2200人分が上積みされます。例えば、日本女子大は文学部の定員を減らし、定員100名の建築デザイン学部を新設、脱炭素や建築分野のデジタル化を研究する人材を育てる方針だとか。明治学院大は、定員80人の情報数理学部を新設し、データサイエンティストなどの育成に向け、大型計算機設備を備えた新校舎を建設するそうです。中央大は2027年度に定員300人の農業情報学部を新設し、食料危機などをDXで解決する人材育成を進めます。このように見ていくと、2027年までに新設学部・学科はデジタル系が6割を占めることになります。

 国はデジタル人材が30年には約79万人不足すると推定していますが、定員増になると、教育の質が低下することが懸念されます。当然、学部新設に際し、より厳格な審査が求められることになります。中高では、理系を志向する学生を増やすために、興味・関心を高める授業デザインが必要です。本校でも同様、「理系人材育成プロジェクト」が進められています。