校長ブログ

教え子との対話-英語教育編②

2024.05.07 グローバル教育
5月7日

前回の続きですが、今回は文を作ることについて。

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O:表現力となる文はどのように作られていくんですか?

校長:人間の長期記憶に蓄えられた過去の経験や出来事についての知識をスキーマと言うよ。

O:聞いたことはありますが...

校長:例えば、giveという動詞なら「与える人」「受け取る人」「何を」という三つの情報が必要だね。でも、それは骨組みに過ぎず、「誰が、誰に、何を」が決まっているわけではないね。

O:確かに。

校長:実際のコミュニケーションは、相手から発せられた情報について、それぞれがもっているスキーマを駆使しながら内容理解に行きつくわけ。つまり、経験値を利用して次に起こる状況や行なわれるべき行動を予測するんだね。いずれにしても、長期記憶にある関連情報を最大限に活用しながら文を考えていくことが第一歩だね。

O:よくわかります。コーパスも役に立ちますね。

校長:もちろん。文レベルのスキルを高めていくのに重宝してきたのがコーパスだね。これは、日常で使われている言葉の例を大量に集めた、いわば、言語のデータベースのこと。コーパスを通じて様々な場面でどのような言い回しがされているのかを学び、結びつきやすい語をセットで覚えておくとネイティブのリズムに近づけるよ。

O:具体的な勉強法があるのですか?

校長:コーパスを利用した学習と言えば、コロケーション。コロケーションとは「濃いコーヒー」はthick coffeeでなくstrong coffee、「強い雨」はstrong rainでなくheavy rain 、「罪を犯す」はmake a crimeでなくcommit a crimeなどのように、一緒に使われる語のつながりのことだけど、これは生成AIもカバーしてくれるね。

O:文と文のつながりとなる結束性がパラグラフとなり、さらにそのつながりが一貫性をもったテキストを構成するんですね。

校長:その通り。流暢さの違いはその温度差から生じるものだね。英語に限らず、どんな言語であっても旧情報を代名詞で表したり、反復する語句を省略して繰り返しを避けたり、他の語に置き換えたりといった特性があるだろ。

O:確かに。それらをリーディングの中で徹底し、アウトプット活動につなげたいと思います。

校長:特に、言い換え、具体例、対比、因果関係などの頻出表現の定着は文と文、パラグラフとパラグラブの明瞭性に直結するよ。ここは教師の腕の見せ所だね。

:確かに。リーディング活動と結びつけるなら内容を要約するサマリーライティングが有効ですね。

校長:テキスト本文のポイントとなるところだけをまとめるタスクだけど、目的に応じた分析ができるようになり、自由英作を盛り込むとインタラクティブな活動に発展するよ。到達度が上がるにつれて、なるべく自分の言葉で表現したいものだね。そのためには同意語への書き換えや品詞転換、簡略化、複雑な文を二文に分ける、一文にまとめる、難しい表現は一般化する、補足説明や文意を明確にするなどのスキルを身につけておきたいね。

O:ここは生成AIと人のコラボレーションできると思います。

校長:そうだね。苦手意識をもつ生徒にどの分野に課題があるのか尋ねると、文法が大半。日本では、5文型が学校現場に定着しているけど、様々な言語学の知見を活用するのも手段。例えば、語彙の本質的な意味から文法を説明しようとするレキシカル・グラマーなら、toを説明する際、元の意味が「(対象・行為)に向き合って」のイメージとおさえる。そして、前置詞に適用させると、face to faceが「面と向かって」、dance to the musicが「音楽に合わせて踊る」などのニュアンスが理解できる。また、不定詞に適用させて、I want to become an artist. なら「私は芸術家になるという"行為と向き合う"ことを欲している」→「私は芸術家になりたい」が理解され、不定詞が「これからする(まだしていない)」未来指向と言われる理由につながる。ここも教師の出番。どんな理論も万能ではないけど、先達の英知は参考になるね。

O:勉強になります。誤答分析についてもお伺いしてよいですか?(続)