校長ブログ
AIの利点と課題が中学の教科書に
2024.05.15
教科研究
5月15日
2025年度から中学で使われる教科書の内容が公表されました。そこには時代を反映するもの、例えば、スマートフォンの保有率が高まり、インターネットに触れる時期が低年齢化する中、ネット上のいじめや情報リテラシーを題材とする記述等が盛り込まれており、探究学習に直結するものが増えた感があります。
AIに関する記述も多々あります。ある中3道徳の教科書には「AIさんは僕の助っ人」という文章が記載されています。長い文章の読み書きが苦手な主人公が兄のアドバイスによって感想文をAIに書いてもらうという設定。出来上がった文章は高く評価され、皆の前で発表するよう頼まれるほどの出来栄えですが、そこに自分の考えや価値観があるのかと主人公が悩む様子が描かれています。
ChatGPTの登場によって注目をあびた生成AI。文科省は生成AIの扱い方に関する指針を作成し、利用を認める考えを示していますが、現場での活用事例を踏まえ、随時改定していくそうです。今回、公表された教科書検定結果によると、合格した教科書102点のうち7教科28点に上ったとのこと。
中2理科のコラムには「対話型AI」として紹介され、問いに対してまとまった回答を出すため、膨大な情報を吟味する必要がない半面、正確さなどを自分自身で判断しなくてはならないとしています。中3公民のある教科書のコラムには「フェイクニュースにご用心」と題して、AIが大量の情報をもとに作成したディープフェイクと呼ばれる偽画像も出回ると指摘しています。技術科では、AIの発達を中心に、モノがインターネットにつながる仕組みであるIoTや翻訳機械、遠隔手術の例を取り上げているものもあります。
青少年のインターネット利用環境実態調査(こども家庭庁)によると、中学生が自身のスマホを所持している割合は9割以上である一方、SNSなどの「ネットいじめ」は増加傾向にあり、文科省の調査によると、小中高で2万件以上、過去最多を更新しています。教科書でもネットいじめがトピックとされ、中3道徳では、SNSでのやりとりで人間関係が悪くなった例を題材にして「いじめているかどうかなかなか気づけないのはなぜか」と問いかけるものも見られます。
また、情報リテラシーの向上のためフェイクニュースやファクトチェック(事実確認)の重要性を示す記述もあります。中1道徳では災害時にSNSで拡散された水害の偽情報を見て、現地に住む友人に共有してしまった例を漫画で紹介し、「なぜ主人公は偽の情報に振り回されたのか」「振り回されないようにするにはどうしたらいいか」と議論を促すものもあります。教科書は時代を映し出す鏡とも言えるものであり、それらが大学入試に直結することをおさえておきたいものです。