校長ブログ
社名変更、10年で倍以上
2024.05.21
トレンド情報
5月21日
社名変更する企業が増えているそうです。例えば、アーティエンス、カナデビア、プロテリアルなどは、創業100年以上の老舗企業ばかり。国内市場が縮小し、業界再編の波で、資本効率の向上が求められ、経営の環境変化が迫られているのです。
アーティエンスに社名を変えた印刷インキが祖業の旧・東洋インキSCホールディングスは、artとscienceを組み合わせた造語で、「インキ」を社名からなくしています。コロナ禍でデジタル化が進み、純利益が過去最高の時期の7割に落ち込んだそうです。
そこで、復活に向けた業態転換を進める意味で、社名変更を行ったとのこと。実際の業務は、従業員の半分以上が印刷インキに携わるものの、重点事業に電気自動車用の電池や半導体に使う新素材などを掲げ、これまでのイメージを払拭するそうです。
「日経バリューサーチ」にある上場企業や非上場企業など、約1万5000社を対象に、社名変更の推移調査(日経)によれば、5年間(2019~2023)で社名変更した企業は延べ1,630社あり、09~13年までの過去5年間(2009〜2013)と比べると2.3倍。業種別では情報・通信・広告が最も多く、建設・不動産、サービスが続きます。従業員数が多い企業ほど、商号変更する企業の割合が高いようです。事業拡大を目論む企業も多く、社名にも反映しているようです。
日本で株式会社が誕生してから約150年がたち、老舗企業は4万社を超しています。老舗企業の社名変更が相次いだ背景にあるのは、企業を取り巻く環境の変化に他なりません。その一つが、資本効率の向上を最優先する株式市場。東京証券取引所が指針を定め、株主の影響が強まり、企業の事業再編が広がりました。
その例が日立製作所グループの再編です。22年度に日立製作所が手放した日立金属はプロテリアルに、日立物流はロジスティードに変わりました。日立の再編は、化学業界の再編にもつながり、「日立御三家」の1社である旧・昭和電工は日立化成を買収し、レゾナック・ホールディングスになり、石油化学事業からデジタル化で需要が増える半導体向け材料にした事業を展開するそうです。
さらに、社名変更の動機としてはパーパス(存在意義)経営の浸透が考えられます。対外的な環境変化で、業態にとらわれず、パーパスを軸に、新たな次元に変化しようとする企業が増えていることも指摘されています。代表例がニッスイ(旧・日本水産)。同社は、企業としての存在意義を見つめ直し、2030年のありたい姿を「人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー」とする長期ビジョンに定め、水産の枠を超えて「食」の新たな可能性を追求していくとのこと。環境の変化を乗り越え、新たなる成長期に入るために業態をしなやかに変えていく姿勢が求められるのです。