校長ブログ
多文化共生
2024.05.16
グローバル教育
5月16日
日本で暮らす外国人が増えています。現在、約320万人であり、欧米並みに人口の1割を超える時期が2067年ごろと想定されていますが、10年ほど早まると言われています。その意味で、今の子どもたちが社会で活躍する頃には多国籍社会となる可能性が高くなっているのです。
厚労省によると、日本の外国人労働者は204万9千人(2023.10)であり、10年前と比べると2.9倍に増加しています。国籍別ではベトナムが最多の51万8千人で、中国、フィリピンが続きます。在留資格でみると、一定のスキルや経験のある「専門的・技術的分野」が29%であり、特定技能も含まれます。政府は高度人材を積極的に迎え入れる一方、熟練していない労働者に対する受け入れは慎重でしたが、人手不足を受け、出入国在留管理庁はスキルを身につけながら長く日本で働ける仕組みづくりを進めています。
出入国在留管理庁によれば、入国者数から出国者数を引いた「入国超過」は昨年9月までの1年間で24万人と2019年の19万8千人を上回ったとのこと。背景には、中国(78万8千人)やベトナム(52万人)以外のアジア各国の伸びがあり、インドネシア(12万2千人)は前年より47%増、ミャンマー(7万人)は45%増、ネパール(15万6千人)も24%増となっています。
コロナ禍以降、入国制限が緩和され、足止めされていた外国人の来日が増え、円安が進み、日本で働く魅力が薄れるとの見方があったものの、実態として、インドネシアの平均賃金は月181ドル(ILO)であり、日本の1割以下にとどまるなど、各国と日本の賃金格差は依然として大きいようです。
経済協力開発機構(OECD)によれば、主要7カ国(G7)のうち日本以外の国はいずれも移民が人口の10%以上を占めています。カナダやドイツでは政府が移民向けの語学学習プログラムを用意して共生策を進めています。一方、米国はメキシコ国境を越え流入する移民への対策、欧州連合(EU)はアフリカからの移民抑制について議論しています。
現段階で、日本は多言語での情報発信、医療機関や金融機関などの相談窓口の充実が求められています。また、海外ルーツの子どもたちの受け入れや日本で長く暮らせる環境の整備も不可欠となっています。
近年、来日する外国人が増えるだけでなく、日本で暮らす期間も長期化しています。日常会話はできても、学習に必要な言語能力を身につけるための時間が必要です。中学を卒業しても高校入試レベルに達しておらず、学び直しを希望する子どもも多くいます。
政府は過去30年間、外国人の受け入れを拡大してきましたが、定住・永住への支援は後手に回っていた感があります。しかし、今では人口減に対し、外国人材を積極的に受け入れ、「共生」を進める体制を進めています。結婚適齢期の人口が急減する2030年代が近づいており、日本で働いても低賃金のままだったり、子どもが十分な教育を受けられなかったりする現状をどう変えるかがポイントになることは言うまでもないことです。