校長ブログ

ウェルビーイング

2024.04.18 学校生活
4月18

 1月1日に発生した能登半島地震。これまでの平穏な生活を破壊し、甚大な被害を及ぼしました。幸福について改めて考えさせられました。生活の満足度や健康など、幸福感を追求する意味で、ウェルビーイングという語が焦点化されているのを知っていますか?今、国や自治体がそのデータを政策に活用し始め、何が幸せにつながるのかを探究しています。

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 心理学や経済学といった領域がウェルビーイングについて、10段階でどのくらい幸福かという質問をし、回答を比較検討できるようになった結果、働き方や暮らし、ヒューマンリレーションなどが影響することが明らかになってきました。

 ジョゼフ・スティグリッツ、アマルティア・センなどノーベル経済学賞受賞者らが新たな経済指標を検討、『暮らしの質を測る 経済成長率を超える幸福度指標の提案』(2010、福島清彦訳)を発表しています。「世界金融危機」(2008)で失業者が増える中での提言だけにインパクトがあります。

 ここでは、国内総生産(GDP)に代わる経済データの開発に加え、「幸福度指標」の採用が求められ、それに国際機関や各国が応えています。さらに、同連合の関係機関は「世界幸福度ランキング」(2012〜)を発表、英国、アイルランド、イタリア、独仏などが幸福度の指標を導入しています。同じく経済学者であるキャロル・グラハムは、『幸福の経済学』(多田洋介訳)の中で、幸福度の役割が、国家間や国際機関で認められてきたと見ています。

 日本では、『満足度・生活の質に関する調査報告書 我が国のWell-beingの動向』(内閣府、2019〜)が公表されています。多くの自治体が指標を導入しており、『ウェルビーイング』(前野隆司・前野マドカ)には、ウェルビーイングを中心にした町づくりが読み取れます。研究者が調査も増えています。『幸福の測定 ウェルビーイングを理解する』(鶴見哲也・藤井秀道・馬奈木俊介)には、内外の計40万人を対象にした調査から「幸せの鍵・処方箋」が言及されています。その他、『世界幸福度ランキング上位13カ国を旅してわかったこと』(M・ファン・デン・ボーム、畔上司訳)や『全47都道府県幸福度ランキング2022年版』(日本総合研究所編著)なども参考になります。

 日本は「世界幸福度ランキング」で先進国の中では低迷しています。首位の常連のフィンランドと比べると、「人とのつながり」「仕事と生活のバランス、余暇」などの項目で、幸福感を高める活動が不足しています。近年の研究では、助け合いや環境にやさしい行動など、一人ひとりが活動を変えてゆくことで、ウェルビーイングにアプローチする手法が求められています。