校長ブログ
STEAM教育
2024.03.08
カリキュラム・マネジメント
3月8日
STEAM教育という言葉があります。これは、科学、技術、工学、芸術・リベラルアーツ、数学の英語の頭文字などに由来するものであり、理系と文系の視点や思考を参考にしながら課題を発見する力や解決する力を育むキーワードです。
歴史的には、2000年代半ば、STEMという言葉が米国に広がりました。当時は「A」がありませんでしたが、オバマ政権時代に初等中等教育でSTEM分野を指導する教員を10万人育て、この分野で学ぶ学生を100万人増やすという目標を掲げたことが注目されるきっかけになりました。背景にあるのはITやAIの急速な進歩に他なりません。先端技術が発展すれば社会が大きく変わる可能性があるのですから、そうした時代をたくましく生きていける学びの手法として重視されるようになったのです。
高校生のとき、日本人女性で初めて国際数学オリンピックの金メダルを取った数学研究者である中島さち子さんは、steAmを設立し、その普及に尽力されています。中島さんは、失敗できる環境の中で、一歩踏み出してチャレンジするワクワク感を伝えたいと言い、世の中を知り、多様な人との出会いが心を豊かにしてくれると述べられています。
学ぶことは、本来、楽しいものであり、知りたいという前向きな気持ちと伸び伸びと活動することが成長の糧となるのです。学ぶことで自分を幸せにすることが可能になり、それが他人を幸せにするのではないでしょうか?学ぶ意欲のある人こそ、蓄積した力を世の中のために使うことができるのです。
ペースにあるのは「読む」こと。理系人材の育成が叫ばれる中、人文科学、とりわけ文学に関する話題が少なくなりました。山内洋氏(大正大学教授)は文学には言葉を通じて多様な学生を成長させる力があり、実学としての存在意義があると言われています。
一般的な学習経験を言葉にし、整理して使える状態になってはじめて本質にアプローチできるのです。教育改革の主旨が「生きる力」を培い、社会を支えていく基盤をつくることとするなら、自己評価や他者評価を通じてよりバランスのよいものに修正していく力をつけていくことが大切です。
文科省が国立大学に人文社会科学系学部の「廃止」を促す通知を出したのが2015年。AIの進歩が「人間とは何か」という問いを際立たせているのです。人材の育成は重要な課題ですが、高校や大学は若者が自分を見つめ、人生を考える場でもあります。人文学系の教育が持つ価値も積極的に発信していきたいと思います。