校長ブログ

世界基準のリーダーシップ

2024.02.21 大学進学研究
2月21日

 文科省は、地域の中核となり、特色ある研究に取り組む大学12校を支援対象とし、今年から各校に5年間で最大55億円程度を助成することを発表しました。 

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 支援は最長10年であり、5年目に評価、結果によってさらに延長も可能。採択された大学は、北大、千葉大、東京農工大、東京芸術大、金沢大、信州大、神戸大、岡山大、広島大、大阪公立大、慶応大、沖縄科学技術大学院大です。

 文科省の科学技術・学術政策研究所によれば、注目度の高い科学論文数ランキングで日本は過去最低の13位。文科省は10兆円規模のファンドの対象として世界をリードする国際卓越研究大だけでなく、地域の中核となる大学も重視、経済の活性化にもつなげる方向性を打ち出しています。背景にあるのは日本の研究力の低下に他なりません。

 研究テーマも「地球環境を再生する持続的食料生産システムの構築」(北大)、「バイオものづくりの卓越した基礎研究」(神戸大)、「アートと科学技術による『心の豊かさ』を根幹としたイノベーション創出」(東京芸大)など、多彩なものとなっています。

 電池性能を高める技術を開発した山内悠輔氏は、将来のノーベル賞候補にまで挙げられたものの、日本の大学には受け皿がなかったとのこと。そこでオーストラリアに行き、東大と競う名門大に教授として採用、昨年、名古屋大の世界の権威を招く制度第1号に選ばれています。そして、今、産学連携を推進、若手を集めて常識破りの考え方をするとがった人間づくりに邁進されています。(日経2024.1.4)

 大学の講座制は、欧米の知識に追いつくことを大命題とした昭和の時代にはうまくいっていたのですが、時代が変わり、斬新な研究が求められるようになった昨今では世界の高いハードルを超えることできなくなっています。米国ではノーベル賞物理学者の過半数が21歳以下で大学を卒業するそうです。異能こそイノベーションを生む原動力なのです。

 日本は、引用数上位10%の論文シェアが19992001年の4位から2019~2021年には13位に沈んでいます。昨年10月、「ネイチャー」のウェブの記事に「もはや日本は世界トップクラスではない」という文字が踊ったのは昭和99年生」と揶揄されるところと重なります。

 小西哲之氏(京都大特任教授)は、二酸化炭素を出さないエネルギー源の核融合技術を開発するために、京都フュージョニアリングを設立しています。そこにはノーベル賞に貢献した論文に名前が出てくるドイツの研究者はじめ、物理学や経営学の専門知が集まっているそうです。

 かつて、イギリスでは1970年代、ケンブリッジ大学を中心に800社以上の企業を集積、起業が相次ぎ、「ケンブリッジ現象」と呼ばれました。日本も遅ればせながら異能をリーダーに育てあげ、革新に結びつける機運が高まっているのです。