校長ブログ
気候変動
2024.02.08
教科研究
2月8日
地球温暖化によって、健康が悪化したり、動物が凶暴化するといった現象が報告されています。今、気候変動によって、脳の大きさが変わり、その影響が懸念されています。これらはすべては人類の活動がもたらした所産ですが、私たちの知らぬところで人間の心身のあり様が変わるかもしれないのです。
「ランセット」という有名な国際医学誌には、気温が2度上昇することを前提に、2041年から20年間で、65歳以上の熱による死亡率が2014までの4.7倍になるという予測が立てられています。
温暖化の影響といえば、蚊の生息域の変化による感染症のまん延が考えられます。1950年代に三日熱マラリア原虫が生息していなかった地域の約17.3%が近年、新たに適地になったことに対し、オリー・ジェイ氏(シドニー大学教授)は初期症状と述べられています。
心の健康に影響するもので言えば、中国の復旦大学などが年平均でセ氏25度を超えるインド、ネパール、パキスタンの約19万人について体や精神、性的な暴力の頻度を調べています。そして、平均気温が1度上がると、パートナーの女性への暴力が4.5%ずつ増え、今世紀末、世界の気温が3.3~5.7度上がると、暴力は21%増えるというショッキングな予測を発表しています。
米国では、ハーバード大学が8都市で人がイヌにかまれた約7万件の事案を分析し、気温が上がるとイヌにかまれる頻度が増え、気温が高い日はさらに約4%高まるとしています。また、エモリー大学の研究によれば、気温が1度上がるとヘビにかまれる頻度も約6%上がるそうです。
暑さが動物や人の脳にどのように作用するかという生理学的な仕組みについて、ハーバード大のクラス・リンマン博士は、暑さなど、生理的なストレスが高まるとホルモンを作る組織の働きが高まり、短絡的な問題解決に走りやすくなるとおっしゃっています。
これまで温暖化によって脳の大きさが変わる可能性が指摘されてきました。ロサンゼルス郡自然史博物館の研究チームは、過去5万年の約300個の頭蓋骨の容積から脳の大きさを推定し、温暖化すればさらに10%縮むことを発表しています。
世界気象機関(WMO)は、19世紀後半と比べ、世界の平均気温は約1.4度上昇するとしています。そして、脳の大きさと関係するならば、それはいつからなのか、また、縮むと認知機能などに影響するのかなど、温暖化によって脳が受ける影響のメカニズム解明はこれからの課題としています。