校長ブログ

歴史的建造物の再生

2024.01.29 トレンド情報
1月29日

 少子高齢化に伴い、消失の危機にある歴史的な建造物を活用する取り組みが活発になっています。この10年、有形文化財に登録された建造物は1.5倍に拡大しています。異なる分野、例えば、ワインやアートを組み合わせるといった斬新な発想で、新たな価値を生み出す取り組みが始まっているのです。(本校も昨年、神戸モダン建築祭に参加させていただきました)

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 歴史的に価値がある建造物を保護するために、文化財を登録する制度が始まったのが1996年。これまで価値が高い文化財は国宝や重要文化財に指定され、国の保護を受けてきました。指定の場合は、改修などでは制限があるなど、要件が厳格でしたが、登録の場合は、維持管理の補助は手薄であるものの、所有者に対する規制は緩やかであり、改装なども比較的自由にできます。また、登録されれば固定資産税や相続税が減免される利点もあります。

 登録有形文化財は、全国に約13,700件あり、10年前と比べると、約4,600件増加しています。全国には、歴史的に価値があるにもかかわらず、所有者が保全を諦めてしまった建物が点在しています。近年、それらを登録制度を活用して保護し、新たな価値を生み出す事例が増えています。

 山梨県甲州市勝沼町は、ワイン醸造で有名ですが、地域に根付く産業と有形文化財を融合した取り組みを行っています。店舗などが和風建築の醸造所があり、有形文化財に登録。明治期に建てられた「くらむぼんワイン」の旧主屋は明治期に建てられたものですが、ワインの販売や試飲スペースが設けられ、ミニコンサートやワインセミナーを開催しているそうです。

 典型的な例が愛媛県大洲市の旧村上家住宅。城下町の風情が残るエリアです。かつての豪商の家であった建物は荒廃していましたが、古い民家の維持管理を担うKITAが修復し、ホテルとして再生しています。現在、有形文化財に登録され、国が認めた文化財に泊まれるという魅力を生み出せた今、インバウンドが後を絶たない状態になっているそうです。

 鉄砲鍛冶屋敷の建物が多く残っている堺市は、地元の住民が中心になって「町なみ再生協議会」を立ち上げ、あんどんの点灯など江戸時代の街の風景を体感するイベントや勉強会を地域全体で開催し、理解を深めています。古い建物をアートの展示空間とする長野県松本市では登録有形文化財を含む19カ所を会場とし、「マツモト建築芸術祭」を開催。8万人以上が来場し、地域の経済波及効果は大きいものとなったようです。