校長ブログ

未知の生態系

2024.01.24 教科研究
124日

 海に生きる生物の9割が未発見とされており、特に、深海は未だベールに包まれたまま。しかし、全容が解明される前に存続が危ぶまれるという指摘があります。

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 海洋生物の国際探査プロジェクトである「オーシャン・センサス」が進められています。世界の海域・水深を探索し、10年間で10万種の新種を見つけるのが目標。世界22機関が参加していますが、日本の研究機関や大学も加わるようです。

 現在、約23万種の海洋生物が発見、登録されていますが、実態としては、その10倍と考えられています。確かに、日光が届く海には豊かな多様性がある一方、深海は観測も限られる分、未知の生物への期待感があります。

 具体的に言えば、近年、駿河湾の南、水深約2100メートルで撮影されたヨコヅナイワシ。生態系のピラミッドのどこに位置するかを体内のアミノ酸に含まれる窒素同位体の比率をもとにした栄養段階の調査で推定できるそうです。結果は「4.9」であり、これはピラミッドの下から約5段目にあたるとのこと。単純に考えると、植物プランクトン、動物プランクトン、小さい魚、大きい魚、そしてヨコヅナイワシということになります。

 水深6000メートルより深い超深海ではヨコヅナイワシのような魚型は少なく、日本近海では、オタマジャクシ型のスネイルフィッシュが多いとのこと。ただし、8000メートルではスネイルフィッシュと甲殻類の一種のヨコエビがおり、いつもはスネイルフィッシュが捕食者だが、弱ると逆にヨコエビに食べられてしまうそうです。

 コペンハーゲン大学(デンマーク)が「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した研究報告によれば、温暖化ガスの排出が続けば、大西洋で熱帯の暖かい海水を北へと運び、深層では南に向けて流れる大きな海流の循環である『大西洋子午面循環(AMOC)』が早ければ25年、遅くとも95年までに止まるそうです。

 1000年以上もの年月の中で、海流が表層と深層で循環しています。深海への酸素の供給は深層循環によるものですが、その循環が止まると酸素が供給されなくなり、深海の生物は絶滅の危機に陥る可能性があります。深海の生態系が未知のまま終わらせない探究が続けられているのです。