校長ブログ

ロボによるiPS細胞培養

2024.01.03 教科研究
1月3日

 ロボットを使ってiPS細胞が培養される時代が来たようです。その最先端をいくのがアステラス製薬。ロボットによる医薬品製造を申請し、2026年までに臨床試験で使う薬の供給を目指すとのこと。作業を機械化すれば正確さは増し、培養の成功率を6割以上高められることが見込まれています。

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 アステラスが導入したロボット名はMaholo(まほろ)。2つの腕を動かして、溶液を注入したり、細胞培養プレートを移動させたりするだけでなく、人間の動きを再現して作業できるそうです。

 iPS細胞は、培養して増やし、その後、神経細胞や血液細胞など、治療に使う目的の細胞に分化させる必要があります。これまではこうした作業には温度差があり、微妙な条件の違いで目的とは異なる細胞に分化するリスクがありました。

 しかし、まほろの細胞の培養の成功率は50%から8090%に高まり、人間では難しい細かい作業もこなし、正確に器具を操れるそうです。さらに、終日稼働するロボットであれば精度の高い実験を繰り返し、より多くの培養条件を比べられるだけでなく、AIと組み合わせ、従来と同じ時間で1001000倍規模の実験をこなせるようになったというから日進月歩には驚くばかりです。

 同社は、すでにiPS細胞などを使った創薬研究にロボを導入し、昨年、製造に活用する検証も始めています。ロボットで作った細胞医薬品の実用化には規制当局の了承を得る必要があります。そこで関係機関と協議し、まほろを使い作った治験薬の供給をめざすそうです。

 中外製薬もロボットの導入を進めています。同社はオムロンと組み、細胞培養などの自動化をめざし、遺伝子のコピーを作る工程を自動化するシステムを開発しています。

 医薬品の研究開発は10年以上かかり、成功率は約3万分の1と言われるほどハードなもの。今後、ロボットとAIで創薬の高度化や効率化が進むことが期待されるのは技術革新の力に他ならないのです。