校長ブログ
AIの進歩と大学
2024.01.10
大学進学研究
1月10日
AIの進展によって大学教育のあり方が見直されようとしています。近年、様々な職業がコンピューターに置き換わり、仕事内容が変化していく中、学生のキャリア形成という点で、大学の学部学科の存在意義が問われ、再編が検討されています。
働き方も変容していき、生成AIに代替されやすい就職先を多く抱える学科は危機感に苛まれそうです。しかし、あまりにもAIの脅威ばかりに目がいきすぎるとかえって問題の本質を見失いかねません。生成AIが浮き彫りにしたのは、かねてから大学が抱えていた問題、つまり、大学とは何を教え、どのような力をつけ、社会に貢献するかということであり、最終的には他とどのように差別化して特色づくりができるのかという本質論にたどり着きます。
日本にある約600の大学全体の7割を超える私立大学があり、その多くが学生確保の一環として就職への有利さをアピールしています。現実的には、大学における研究の目的は就職がすべてではなく、学問を究める場でもあるということです。しかし、AIで事足りる分野を学生がわざわざ履修することが考えにくいのもまた事実。大切なのは、激動する社会をたくましく生き抜く力が身につくかどうかに他なりません。その意味で、大学には何を教え、どのようなスキルを修得させるのかがより鮮明に求められてくるのは自明です。だとすれば、大学のカリキュラムを見直し、新たな就職先を確保するのがAI時代の要請ということになります。
財務省によれば、18歳人口は現在の約112万人から10年後は約79万人になり、進学率が伸びても入学者数は増えないとのこと。日本私立学校振興・共済事業団(2023)によれば、私立大の53・3%が定員未充足です。選ばれる大学になるには、生成AIの存在に脅威を感じるのでなく、リカレント教育で社会人に大学の門戸を大きく広げるなど、ステークホルダーの幅を広げることで最適解は導けるはずです。