校長ブログ
海外の大学事情①
2023.12.30
大学進学研究
12月30日
米国の大学には、寄付を基金として運用し、その運用益に選ばれた教授にチェア・プロフェッサーという肩書を与える制度があります。寄付する側の動機は母校愛。卒業生の支援は最高の贈り物です。チェア(椅子)には寄付した人や企業の名前を付ける場合と記念する人の名前を付ける場合があります。前者の例は、マサチューセッツ工科大(MIT)の『パナソニック・プロフェッサー』、今回の事例は後者にあたります。
カーネギーメロン大(CMU)がロボット工学などで知られる金出武雄教授を記念した「タケオカナデ・プロフェッサー」というチェアを設けました。日本人名のチェアは珍しいようです。
チェアは教授ポストにある人に与えられる肩書ですが、名誉だけでなく、基金も使えます。タケオカナデ・プロフェッサーの寄付者は、ロボット研究所の教え子であり、中には起業した者もいるそうです。一般的な金額は、CMUでは3億円ぐらいであり、年利5%の運用で毎年1,500万円の研究資金とのこと。
米国では研究費はすべて競争的資金。従って、研究者は自ら稼がなければならないわけです。大学ではチェアを増やすことがトップの重要な仕事になっており、職員も世界中の卒業生や企業を回り寄付の獲得に努めています。
誰に授与するかを決めるのは寄付者ではなく、大学であり、寄付者が亡くなった後もチェアは存続します。金出氏は、CMUは計算機科学などでは全米トップクラス、学生は競争心が強く、自分を向上させようとする気概に溢れているものの、日本の初等中等教育は素直な向上心を育むことを怠っているとおっしゃられています。
また、横断的に学ぶSTEAM教育の重要性を説き、日常の中での素朴な疑問と物理法則や数学などがどう関係するかを考えることが大切と言われています。日本の大学の研究力の低下については、研究の目標の低さ、不明確さを指摘されています。
基礎研究と応用研究の連携に関しては、何に使えるか分からない基礎が解明され、それを使って役に立つ応用が起こるというのは古い科学技術観とし、米国では基礎、応用とは区分けせず、実際の問題が解けるかを中心としてきたことが述べられています。