校長ブログ

学びの場の変化

2023.11.25 カリキュラム・マネジメント
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 人口が1億人を切る2050年代には、小学校の新入生は1970年代に生まれた団塊ジュニア世代の3分の1になると見込まれています。学びの場が大きく変わる可能性があるのです。

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 将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所)によれば、日本の人口は2056年に1億人を割り込むとのこと。1970年代なら新1年生が約160万人おり、1学年34クラスがふつうでしたが、この年に小学校に入学する児童は60万人台です。

 今年の数値で見れば、全国にある小学校は約1万9,000カ所。統廃合を進めなければ、1校あたり200人、1学年あたり35人になる計算です。地方になれば、学年が違う子供が同一クラスになる「複式学級」にせざる得ません。単独で自治体が小学校を持てる目安は1万3,000〜4,000人と言われており、自治体の23割は1学年2クラス以上を保てないということになります。

 学びの場の変容に伴い、小学校は歩いて通うという概念を捨てなければならなくなるかもしれません。例えば、人口約4万人の富山県魚津市は小学校でスクールバスを導入しています。同市は12校体制だった小学校を5校に再編し、通学距離が3キロ以上の児童がスクールバスで通っています。3校を統合したため、児童約260人のうち、60人が利用しています。規模が小さすぎるとクラス替えができないだけでなく、複式学級を導入しても到達度が違いすぎると、生徒によっては自習に偏りがちになってしまいます。

 いずれにせよ、同年代の子供を集め、教育するという明治時代から脈々と続くあり方にバリエーションを加えなければならないのは自明です。池本美香氏(日本総合研究所上席主任研究員)は、音楽や体育などの実技教科は学校、それ以外はオンラインで自宅学習ということも考えられうると言及されています。

 海外では、到達度に合わせて、自宅でのオンライン履修する「ホームスクーリング」を認める国もあり、柔軟な教育方法が試みられています。英国では限られた財源で教育効果や生活の質を高めるために、「拡大学校」を創り、そこでは課外活動を充実させるだけではなく、保護者や住民向けのスポーツや学び直しの場として学校を活用しています。

 学びの環境を保つには、子育て支援や高齢者向けの施設を学校の中や近隣に移し、幅広い世代が利用しやすくし、タイムシェアすることが求められます。 2056年に向けてのキーワードは、学びの選択と地域に開かれた学校に向けた産官学協働です。