校長ブログ

お酒に弱い日本人

2023.11.18 トレンド情報
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 人の体質や病気のなりやすさを探る進化医学が注目されています。骨や歯に残るDNAの分析が進み、日本など東アジアに多い酒に弱い体質は、特定の病気に強くなるための進化の結果かもしれないと考えられるようになってきたのです。

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 進化医学は、例えば、人類が狩猟採集をしていた頃、
エネルギーを脂肪として蓄積する遺伝子は有利とされましたが、飽食の現代になると肥満のリスク要因となっている等々、なぜ病気になるのか、なぜこのような体質なのかという原因を探ります。

 2022年のノーベル生理学・医学賞は、ネアンデルタール人のDNAを解読した古代ゲノム学の研究者に贈られましたが、人類が受け継いだ遺伝子の変異がコロナの重症化に関わっている可能性があることを指摘しています。

 日本人の体質にもかつての感染症が影響を及ぼし、その一つがお酒の強さに表れているという仮説が生まれました。体内ではアルコールをアセトアルデヒドにし、さらに酢酸にする2段階で分解します。お酒に弱い人は1段階目が速かったり、2段階目が遅かったりするため、有毒なアセトアルデヒドがたまりやすくなっているとのこと。日本人の9割以上は1段階目も2段階目も弱く、この体質が感染症の耐性と関係するというのです。

 アセトアルデヒドが体内にたまりやすい体質は不利益に見えます。お酒に弱いと発がんリスクが高くなるとも言われています。この体質は偶然ではなく、何らかの要因で進化の過程で起きた結果と見られていますが、その要因が感染症を防ぐためなのかどうかはまだ分かっていません。

 遺伝子解析の調査(ユーグレナ、対象は約2万人、2022)によれば、東北や沖縄はお酒に強いタイプが多く、中部や関西は少ないそうです。この地域差は「二重構造モデル」と言われています。歴史的には、1段階目は弥生時代に大陸から来た人々が列島に広がり、混血が進み、2段階目の「弱い」タイプは中国南部で増え、その血が引き継がれたと考えられています。

 縄文人の体質は人骨などの古代DNAから分かってきました。小金渕佳江氏(東京大学助教)によると、縄文人からは1段階目の遺伝子はお酒に弱いタイプと強いタイプの両方が見つかり、2段階目は全て強いタイプとのこと。1段階目の弱いタイプは縄文時代には広がっていたようでずが、2段階目は弥生時代以降のDNAをさらに分析しなければわからないそうです。

 ルーツを探るにはデータが必須。金沢大学のサピエンス進化医学研究センターでは、日本列島を中心に江戸時代までの骨などから1万人規模でデータを集める計画を掲げています。各時代のゲノムから現代人の成り立ちが解明されるまで、もう少し時間がかかりそうです。