校長ブログ

コーヒーと2050年問題

2023.11.23 教科研究
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 気温が上昇し、降雨量が変化するため、喫茶店などが使うアラビカ種コーヒー豆が半減する「2050年問題」に対し、コーヒー業界が品種開発を迫られています。当然、豆の価格が上がる可能性があるわけです。

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 気候変動に伴うコーヒー豆を巡る問題は、もはや国や企業の努力だけでは解決できないところまできています。特に、コーヒー豆生産の6割を占めるアラビカ種の減少は深刻。栽培に適するのは北緯25度から南緯25度の「コーヒーベルト」だけであり、味を凝縮するため、昼夜の寒暖差がある標高の高い地域でのみ栽培されているのです。

 アラビカ種は、香りがよく、飲みやすいものの、病害虫や気温の変化に弱いという面があり、気候変動の影響で2050年までに半減すると試算されています。栽培適地が減り、農地の生産効率が向上しなければ、生産量は減少します。最大生産国であるブラジルが大規模な霜害に見舞われたり、供給懸念によって、ニューヨーク先物が一時、高値をつくなど、危難続きとなっています。

 気候変動が原因で供給不足となるだけでなく、世界の人口が増加し、経済が発展すると、コーヒー豆の製造コストは上がり、価格は下がりにくくなります。気温や雨量の変化に強い品種の開発が進み、コーヒー豆の収量と農園の収益性を高めれば、価格が安定します。価格が落ち着いて収量が上がれば生産者は収益を得られやすくなるということになります。

 柴田裕氏(キーコーヒー社長)は、異常気象による産地の生産環境の変化によって、コーヒーベルトで雨期と乾期のバランスが崩れ始め、干ばつで実が育たなかったり、多雨で病害が蔓延したりする被害が起き、結果として、コーヒー豆価格を押し上げる材料にもなっていることを指摘しています。

 また、「2050年問題」に対し、財政的に厳しい生産国は気候変動への対策や農園の生産性向上に向けての投資ができないこと、生活苦から他の果物や野菜に転換する農家も増えていること、農園のインフラ整備や品種開発への支援を業界全体で取り組む必要性などを言及されています。特に、生物多様性の保全という意味で、コーヒー豆を他の植物と一緒に植え育てるアグロフォレストリー(森林農業)への支援が不可欠であることを強調されています。このように、観光農園化を通じて地域に雇用を生み出すなど、最適解を求めて様々な努力が続けられているのです。