校長ブログ
地方図書館の工夫
2023.09.12
トレンド情報
9月12日
これまでの公立図書館のイメージと言えば、本の貸し出しが中心。しかし、 人口流出や少子化が進む地方では、多くの自治体が統廃合を進める中、公立図書館に地域活性化の拠点としての役割が期待されています。
社会教育調査(文科省、2021)によれば、全国の公立図書館は3,000施設を超え、10年間で100以上増加しています。1人当たりの貸出冊数は滋賀県が6.9冊とトップ。10年度と比べると、大阪府(4.5冊)は26.8%減、奈良県(4.2冊)が23.1%減ですが、和歌山県は3.9冊と20.7%増え、全国2位の増加率となっています。
滋賀県は1980年前後から文化振興政策をとり、図書館の利用促進を進めています。当時、県内の公立図書館は10カ所、1人あたりの貸出冊数も年1冊前後でしたが、独自の補助金制度を作り、各市町村に最低1つ図書館を設置し、司書の採用と教育にも力を入れています。建築家・隈研吾氏が設計した守山市立図書館は、木材を使ったデザインが特徴であり、ボランティアの中高生が選書コーナーやイベント運営を担っています。来館者はリニューアル前に比べ88%増えたそうです。
高知にある図書館を核とする「オーテピア」は、障害者向け図書館やプラネタリウムがある科学館の複合施設。来館者は100万人を突破、県の人口あたりの貸出冊数を10年で80%以上伸ばしたとのこと。また、電子書籍を拡充したり、市町村立図書館への配本の回数を拡大するなど、最寄り施設でオーテピアの本を読めるようにした結果、貸出冊数が10年で倍増しています。世界的に有名な建築家の隈研吾氏が手掛けた梼原町にある「雲の上の図書館」は、地元産の木材を使った内外装が特徴であり、同館をコースに加えたツアーも人気スポットとなっています。
江戸時代から鍛冶技術で知られる新潟県三条市にある図書館を核とした「まちやま」は、地元企業が製造に関わった電動ドリルやかんな等を無料貸し出しする「まちやま道具箱」をスタートさせています。奈良県立図書情報館では、地元の魅力を発信する拠点として位置づけ、ホテル日航奈良の宿泊客に本を貸し出すサービスを行っています。神社仏閣の歴史書やインバウンド向けのビジュアルブックなど、観光に役立つ本をホテルに置き、興味のある本を客室で読むことが可能。鳥取県立図書館は起業支援に力を入れ、創業勉強会を定期的に開催し、起業や経営改善に関するサービスを拡充しています。和歌山市民図書館では、ヨガ教室、演奏会、子供と過ごせる空間などで地域の活性化につなげています。
多くの自治体が図書館を商業施設などと複合化して再整備し、人を呼び込むことで、経済の活性化につなげる取り組みをしているのです。